「んぐっ!」
と、ビエール・トンミー氏は、股間を押さえた。同じ会社のマーケティング部に行った時に妻を初めて見た時と同じ『反応』であった。
すると、その様子を見透かしたかのようなiMessageが、友人のエヴァンジェリスト氏から届いた。
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「おい、どうした?嘗て哭かせた若い娘のことでも思い出していたか?」
「このドアホがあ!お!...思い出したで!」
「ど、ど、どしたん?急に」
「嘗て哭かせたかどうかまでは知らへんが、『高知の女』いうたら、アンタの方やないか」
「え!?」
「どや、図星やろ。せや、アンタ、学生時代、高知にルーツを持つオナゴ、そう、両親が高知出身の同級生やったな、そのオナゴに入れあげてたやんか。偉う酒強かったんやろ?」
「今、その話は関係ないけえ」
「アンタ、そのオナゴに、中世フランス語なんか教えたってたんやろ。さすが、フランス文学の修士様や」
「中世フランス語なんか、もう忘れたけえ」
「中世フランス語を教えたことを恩にでもきせて、そのオナゴと飲みに行っったんやろ」
「ワシ、酒好きじゃないけえ」
「自分が、酒が好きかどうか、そんなん関係あらへん。そのオナゴを酒で潰して、エエことしよとでも思うてんやないか?」
「じゃけえ、関係ないこと云うとったら、話が進まんけえ」
「やけど、そのオナゴ、酒が強うて、飲めば飲むほど、顔は赤くなるどころか青うなって、エエことできひんかったんやないか?」
「あ、そうじゃ。『はりまや橋』で簪を買うたんは、『純信』じゃあ、云う説もあるし、好きな女を盗られた『慶全』が、『純信』が播磨屋橋で簪を買うて、『お馬』に贈ったちゅう嘘の申立てをした、いう説もあるんよ。まあ、どっちにしても『よさこい節』の通り、『坊さん簪、買うを見た』いうことになるんじゃが」
「おいおい、話を誤魔化すんやないで」
「よう聞きんさいや。で、『慶全』か『純信』かどっちか分からんが、簪を買うた店は、『はりまや橋』の『橘屋』いう小間物商で、この店は、今もあるんよ」
「酒を飲ませて、アンタが、エエことしよとした女子のこととは関係あらへんやないか」
「その『橘屋』いう小間物商は、今は、『国吉酒店』なんじゃ、と聞いたことがあるんよ。『橘屋』のあった場所は、今の『国吉酒店』とは少し違うとったみたいじゃが、『国吉酒店』のすぐ近くには、そうよね、『ペンギン葉山』さんの『南国土佐を後にして』の歌碑があるんよ」
「『ペンギン葉山』やのうて、『ペギー葉山』やで」
「そうじゃ。ようよう話が、『ペンギン葉山』に戻ってきたのお」
「なんやて!」
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「(何が、ようよう話が戻ってきた、だ!話を変な方向にばっかり持っていくのは、アイツの方じゃないか!)」
と、濡れ衣を着せられた思いのビエール・トンミー氏は、怒りから、またまた鼻腔を膨らませた。
(続く)
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