「(だけど、何故、アイツは、『モーツァルト』のことを『モーツアルト』、『モーツアルト』と云ってくるんだろう?惚けているのではなく、何か、アイツ特有の確信犯的な話の持って行き方のようにも思える)」
と、ビーエル・トンミー氏が、あらためて心に警戒の紐を強く締めた時、その警戒相手エヴァンジェリスト氏から、ようやく謎解きを始めるiMessageが入ってきた。
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「『モーツアルト』が作ったんじゃあないけえね。『くじっこ海女ちゃんスイートクッキー』とか『三陸じぇx3チーズクッキー』を作ったんは、『岩手久慈っこ本舗』なんじゃそうじゃけえ」
「当り前やないけ。『モーツァルト』は、曲は作ってもクッキーは作らへんで」
「ほりゃ、ほうじゃ。アンタの云う『モーツァルト』は、そうじゃろうのお。アンタ、何年か前に、ワシが広島からのお土産をあげたんを覚えとらんの?缶に入っとったやつじゃ」
「あ、そういうたら、そんなん貰うたなあ」
「あれが、『からす麦の焼きたてクッキー』じゃったんよ」
「ああ、あれかあ。美味かったことは、よう覚えとるで」
「あの『からす麦の焼きたてクッキー』を作って売っとるんが、『モーツアルト』なんよ。会社名が、『モーツアルト』で、『バッケンモーツアルト』は、商号で、お店の名前なんよ。クッキーだけじゃのうて、ケーキやパンも売っとるし、なんか最近は、もみじ饅頭も売っとるみたいなんよ。喫茶店になんとる店もあるしのお。クッキーもケーキも美味しい店じゃ」
「アンタにもろうたクッキーは確かに、美味かったで。でも、ワテが広島にいた頃にはなかった店やな」
「最初の店ができたんは、1974年じゃそうじゃけえ、そん時はもう、アンタあ、20歳で、もう広島におらんかったけえ、『モーツアルト』と聞いて、作曲家の『モーツァルト』と思うても無理ないのお」
「ああ、そやで」
「1974年いうたら、ワシも、『OK牧場大学』に入学して、『都立大学』いうか、『都立大学』駅のある目黒区八雲の下宿に住むようになった年で、もう広島にはおらんかったけえ、『モーツアルト』のことを知ったんは、もっとずっと後になってからじゃ。アンタは、1974年はどこにおったんじゃったかいねえ?」
「え?そないなこと、どうでもエエ」
「あ…確か、『井荻』じゃったかねえ?」
「どうでもエエ云うてるやろ!」
「あ!『恐怖の便所じゃ!」
「ひゃっ!」
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「ア、ア、アイツ、何を云い出すんだ!『井荻』の頃のことなんか、どうでもいいじゃないか!」
と、ビエール・トンミー氏は、自分が思いをそのまま口に出していることも気付かない程の動揺を全身に示した。
(続く)
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