「(アイツのことだ、『知らん、知らん!事務所を通してくれ!』とでも云うんだろう。だが、そうはさせんぞ)」
と、ビエール・トンミー氏は、正義を追求しようとしているのに、悪人面になっていた。
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「エエか、『事務所を通してくれ!』は、効かんぞ。アンタの事務所は、ワシんとこ、『オフィス・トンミー』やからな。事務所としては、真摯に回答することを求めるで」
「事務所を通してくれ、なんて云わんけえ」
「おお、ようよう観念したか」
「ワシ、『檀ふみ』からの手紙を『捏造』なんかしとらんよ」
「シラを切るつもりか。アンタ、大学に入学した年、そう、20歳の年やな、広島の実家に夏休みで帰省しとる時に、『檀ふみ』からの手紙が届くようにしたやろ」
「『檀ふみ』からの手紙なんか、もろうたことないで」
「それを両親に見せて、自慢したやないか。見せたあ、云うても、封筒の『檀ふみ』いう名前んとこと、中の手紙の最後の方の『またお会いしたい』とか書いてあるとこだけやったがな」
「アンタ、その時、ワシの実家に来とったん?いや、来とらんかったじゃないね。見とりもせんことがどうして分かるん?」
「おお、『聞いてもいなかった電話の中身がどうして分かる?』と云うた、どこぞやの『捏造』女と同じ理屈やな。それに、『その時』云うたな。そりゃ、『その時』があった前提での言葉やないか」
「違うんよ。『檀ふみ』からの手紙は、もろうたことないけど、『檀ふみ』からの手紙に見せかけた手紙は、もろうたことあるんよ」
「そや!ようよう認めたな。それ、まさに『捏造』した手紙はないか」
「いや、ワシは、『檀ふみ』からの手紙に見せかけた手紙なんか書いとらんけえ」
「そりゃ、そうや。書いたんは、ワテの妹やさかいな」
「じゃったら、『捏造』したんは、アンタの妹さんじゃないねえ」
「実行したんは妹やが、教唆いうか指示したんは、アンタやないか!」
「ワシ、妹さんに会うたことはあるけど、『檀ふみ』からの手紙に見せかけた手紙を書いて、とお願いしたことはないけえ」
「妹に書いてもろうてくれ、とワテに頼んだんやし、どっちにしても、その手紙を親に見せて、如何にも『檀ふみ』と特別な関係にあるように思わせたんは、『檀ふみ』に対する立派な『罪』やで」
「いや、ワシ、『檀ふみ』からの手紙に見せかけた手紙を親に見せたことはないけえ」
「ンダラア!エエ加減にせえよ!」
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「(ボクはハッキリ覚えているんだ。アイツは、ボクに対して、妹に、つまり女の子文字で『檀ふみ』からの手紙に見せかけた手紙を書いてもらってくれ、と頼んできたんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、友人エヴァンジェリスト氏からの依頼を妹に頼んだ時の光景を思い出した。
(続く)
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