「(アイツ、この期に及んで!ボクの妹まで巻き込んだ一芝居をあくまで誤魔化すつもりか!許さん!)」
と、妹愛に燃えるビエール・トンミー氏は、『檀ぶみ』からの手紙なんぞという巫山戯たものを持ち出してきた友人エヴァンジェリスト氏からのiMessageが映るiPhone 14 Proの画面を睨みつけ、反撃のメッセージを打ち始めた。
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「アンタ、嘘はアカンで!証拠を見せえや!」
「あの手紙、もうないで。両親が捨てたかもしれんし、どっかにとってあったとしても、父親の死後、実家を一緒に相続した次兄が、実家を売却する時に、実家にあったもんは全部、廃棄したけえ」
「そないな云い逃れが通るかい!」
「いやの、行政文書なんかも何年か経つと廃棄されるんよ。確か、法律の改正なんかに関わる文書でもせいぜい30年くらいしか保存されんはずじゃけえ、あの手紙なんか、とっくに廃棄されとってもおかしゅうないんよ」
「そうやって、役人連中は、後になって問題の火の粉が自分にかかって来んようにすんのやな」
「ワシなんか、リタイアした会社に、30年以上も前の資料をちゃんと残してきたし、それもできるだけスキャンして、PDFにして、共用サーバーの共用フォルダーに検索しやすいよう残してきたんよ」
「おお、なかなか見上げた仕事ぶりや。…..ん?いや、そないな話に持って行って誤魔化そうとしてもアカン!『檀ふみ』が『檀ぶみ』になっとったなんて、嘘か、嘘やないにしても、アンタが、『ふ』に濁点を付けるかしたんやろ?」
「いや、どうじゃろう?記憶にないで」
「今度は、政治家答弁か!?」
「『ぶ』の濁点は、確か、なんか、かなり小さかったような気がするけえ、なんかゴミかシミでもついたかなんか、したんかもしれんね」
「なんにしてもや、アンタ、やっぱり『罪』を犯したんや」
「じゃけえ、ワシ、『檀ふみ』の手紙は捏造しとらんけえ」
「『檀ふみ』は兎も角、アンタのご両親に対する『罪』や。ご両親は、問題の手紙を見て、『檀ふみ』からの手紙じゃ、と思うたんじゃろ?」
「うっ…まあ、そうじゃった、と思う」
「アンタ、『檀ふみ』からの手紙じゃない、と告白したんか?」
「いや、元々、『檀ふみ』からの手紙じゃないけえ」
「ご両親は、『檀ふみ』からの手紙じゃ、と信じたまま亡くなられたんやろ?法的な意味での『罪』ではないかもしれんが、いや、法的な『罪』以上の『罪』をアンタは犯したんやで」
「……」
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「(とうとう、アイツを追い詰めたぞ。ふふ)」
と、ビエール・トンミー氏は、『原宿の凶器』と呼ばれた頃、周りの女性たちを痺れさせたニヒルな笑みを頬に浮かべた。
(続く)
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