「(ふふ。アイツ、このことに触れたら、グーの音も出まい)」
と、ビエール・トンミー氏は、両頬を緩め、アルカイックスマイルを浮かべながら、友人エヴァンジェリスト氏宛のiMessageを続ける。
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「『阿川佐和子』の名前が出たら、あのオナゴの名前も出さん訳にはいかへんやろ」
「へ?」
「誰のことか、分らへんか?『火宅』云うたやろ」
「『新宅』くんなら覚えとるがのお。翠町のクリーニング屋さんの息子じゃった。『皆実小学校』の6年の時、同じクラスじゃったし」
「誰が、『新宅』云うたんや。それに、オナゴや云うたやろ。その『新宅』くんは、オナゴやないし、LGBTでもあらへんやろ。ええか、ワテが云うてんのは、アンタと『噂』のあったオナゴや」
「ああ、『三宅』さんかあ。ひょっとしたら、『三宅』さんいう名前じゃなかったかも知れんが、『皆実小学校』の3年、4年の時、同じクラスで、ちょっと可愛いかった子がおった(卒業する時は、もうおらんかったけえ、転校したんじゃろうかねえ)。ああ、素直に認めるで、まだ、そりゃ、初恋じゃあなかったが(初恋は、5年で同じクラスじゃった『帰国子女』子ちゃんじゃけえね)、ちょっと好きじゃったかもしれん」
「な~ん、ゴチャゴチャ云うてんねん!『新宅』でもなければ『三宅』でもあらへん。『火宅』や。『火宅の人』の娘じゃ」
「ああ、『カープタクシー』かあ。父が、長男夫婦に置き去りされて、実家で独居老人になった時、タクシーを呼ぶ時には、『カープタクシー』にしとったけえ、家の中に『カープタクシー』の電話番号が書いて貼ってあたんじゃが、『カープタクシー』の経営者のことやその家族のことはよう知らんのんよ。経営者は、『平原』さんいう人らしいけどのお」
「このド・アホンダラあ!エエ加減にせえよ。『火宅』がなんで『カープタクシー』になんねん!?『カ』と『タク』しか一緒やないやないけ」
「ああ、すまん、すまん。ワシも歳で耳が遠うなったんやろうねえ」
「文字メッセージのやり取りで、耳が遠いやと!アホ抜かすな!」
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「(アイツ、あくまでシラを切るつもりだな。そうはさせんぞ!)」
と、ビエール・トンミー氏は、今度は、鼻腔を膨らませるだけではなく、眦も釣り上げた。
(続く)
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