「(アイツ、ボケをかましたつもりが、真実を云い当てていたんだ。どうれ…)」
と、満を辞したかのような仕草で、ビエール・トンミー氏は、iPhone14 Proを持つ右手で、友人エヴァンジェリスト氏へのiMessageを打った。
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「エエか。先ず、『橘』が、なんで和菓子の元祖なんか、説明すん前に、『橘』そのもんのことや。『橘』は、『柑橘』の『橘』やろ。『柑橘』の『柑』は、『みかん』(蜜柑)ことや。『橘』も『ミカン』科の木なんや。実もあるんやけど、『みかん』みたいに生で食べるんには向かんで、『橘』は、花や葉っぱを観賞するもんのようやな」
「ほう、まるでアンタじゃね」
「はああ?また、何、云うんや?」
「アンタは、生で食べるんには向かんけど、アンタの美貌は、鑑賞に適しとるけえ」
「まあ、それは否定はできへんな。そやけど、そのことは、まあ、横に置いといてえな。『橘』を日本に持ち込んだんは、『田道間守』(たじまもり)いう人なんや」
「ああ、『タジマ』さんなんじゃね。『タジマ』さんは、外国に強うて、通訳もしとってじゃったけえね」
「なんで、アンタが『田道間守』を知ってんのや?古代の人間やで」
「何、云うとるん?『タジマ』さんが亡くなられたんは、一昨年(2021年)の4月27日なんじゃそうなんよ。『IWGP』いう名前を考えたんも、『タジマ』さんなんじゃと」
「ありゃりゃ、また訳分らんこと云いだしよったで。なんや、『IWGP』て?」
「え?知らんのん?『International Wrestling Grand Prix』じゃないねえ」
「あ、また、プロレスか…」
「ほうよね。猪木がモハメド・アリと戦うことになって、調印式の時なんかに通訳しとったんが、『ケン田島』さんじゃないねえ。猪木が、アリに、『ペリカン野郎』と云われたり、嫌味で松葉杖をプレゼントされた時に、猪木の横に座っとった人よ。イギリス生れで、連合軍総司令部で働いこともあったり、日本のアメリカ大使館の仕事なんかもしそうじゃけえ、英語はお得意じゃったんじゃろう」
「ああ、もうプロレスの話はエエ。『ケン田島』やない『田道間守』は、新羅からの渡来人の子孫やったそうで、『垂仁天皇』(すいにんてんのう)はんに、『常世の国』(とこよのくに)に派遣されたんや」
「『常世の国』て、どこよ?」
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「(ふん!やっぱりそうきたか)」
と、ビエール・トンミー氏が唾棄するように吐いた言葉を見た人がいたら、その言葉の渦の中に、友人エヴァンジェリスト氏は、吸い込まれていくように見えたであろう。
(続く)
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