「(だが、アイツ、ただただ、美青年の『ドリアン・グレイ』のことを持ち出してくるはずがない。ワシが美青年であったことは、周知の事実で、高校1年からの友人のアイツもそのことは、よ~く知っているはずで、今更、どうして、そのことを持ち出してきたんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏は、冷静さを取り戻し、身構えた通り、エヴァンジェリスト氏は、iMessageで、ビエール・トンミー氏のことをまるで『ドリアン・グレイ』と云った意味を説明するiMessageを送ってきた。
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「『ドリアン・グレイの肖像』は、ワシも読んだことはないんじゃが、『ドリアン・グレイ』は、若いままでいとうて、自分の肖像画の方が歳をとればいい、と云って、女を泣かしたり、放蕩生活を送り、希望通り、自身は若いまま、肖像画の方が、歳をとり、醜くなっていったんだそうだ」
「ワテは、女を『泣』かせたんやのうて、『哭』かせんたんやで」
「でも、『ドリアン・グレイ』は、最後は、醜く歳をとった肖像画の方が自分の良心と知って、肖像画を破棄しようとするんじゃけど、死んで醜い老人になり、一方、肖像画の方は美青年じゃったあ、いうお話ならしいんよ」
「ああ…そういうことかあ….確かにのお、ああ、今のワテは…」
「心配しんさんな。『ドリアン・グレイ』は、確かにアンタみたいじゃが、ワシが云うた『ドリアン』は、『ドリアン・グレイ』のことじゃあないけえ」
「なんや、『ドリアン・グレイ』のことは関係あらへんのか!?」
「じゃけえ、『オスカー・ワイルド』じゃないけえね、云うたじゃろうがいねえ。『菓子』の『菓』は、臭い『果物』のことなんじゃろ?ほいじゃけえ、『クサ冠』が付いとるんじゃろ?」
「ああ、臭い『果物』で、ドリアンかいな。も一回、『クッサー!』やなんて、アンサン、ちょっとクドイで。『果実』の『果』に草冠をつけて、『菓子』の『菓』にしたんは、『果』は、『果物』の意味だけじゃのうて、他にも色々な意味を持つようになったからなんや。『結果』の『果』とかで『果て』じゃし、『果敢』の『果』なんか『行き着く(死んだりする)程に』いうような感じとかのお。そやさかい、『果実』の『果』に草冠をつけて『菓』にして、それが『果物』や、ということにしたらしいんや」
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「(ふん。我ながら、博識なもんだなあ)」
と、ビエール・トンミー氏は、ようやく友人エヴァンジェリスト氏ガ茶々を入れてくるのを躱して、『菓子』の『菓』の謂れを説明できたことに満足し、自然と笑みがこぼれていた。
(続く)
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