「(アイツは、こっちの話をまともに聞くつもりはないんだ。言葉尻を掴まえて、ダジャレを云いたいだけなんだ。でも…)」
と、ビエール・トンミー氏は、そんな相手であっても、自らの知識を披露する気持ちを抑えきれず、友人エヴァンジェリスト氏に、『常世の国』の解説をするiMessageを送った。
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「アンタ、『常世の国』は『どこよ?』云うんは、ダジャレ云うたつもりやろが、実は、エエ線行ってたんやで」
「ダジャレ云うたつもりはないんやけど、アンタに褒められたら、なんか嬉しいのお」
「『常世の国』の『常世』ちゅうんは、文字通り、『世』が『常』じゃあいうことで、永遠に変わらん、いう意味じゃ。で、『常世の国』は、その永遠に変わらん、つまり永久不変な、不老不死な国、理想郷いうことなんや」
「不老不死が、理想的なんかのお?死ねんいうことは、辛いことじゃあ思うで。生きとると色々と嫌なこと、辛いことがあるじゃろう?死んだら、その嫌なこと、辛いことともオサラバできるじゃろうが、死ねんかったら、ずーっとその嫌なこと、辛いことが付いて回るじゃあないねえ」
「そないな真面目いうか、しみじみする考えは、アンサンらしゅうないで。アンサンは、『常世の国』は『どこよ?』云うとる方がアンサンらしいで」
「ほいでも、生きとったら、ワシ、年金だけじゃ暮らしていけんけえ、『スパー・マン』として、カートやカゴの整理なんかの仕事を永遠にせんといけんじゃないねえ。そりゃ、勘弁してえや」
「いや、『常世の国』は理想郷やさかい、そこでは、働かんでもエエんやないかと思うで」
「え!働かんでええん?!竜宮城みたいなとこなんじゃね!ほいじゃったら、ワシ、『常世の国』に行くけえ。それ、どこにあるん?『常世の国』はどこよ?」
「おお、エエとこ突いとるで。『浦嶋子』、つまり、まあ『浦島太郎』やな。その『浦嶋子』が行ったんも『常世の国』や、とも云われとるみたいやからな。で、『常世の国』はどこや?やな。エエ質問や。問題は、まさにそこやで。『常世の国』はやな、古代の日本人は、海のはるかかなた向こうにある、と思うてたんやそうや」
「おお、そうなんじゃね。海のはるかかなた向こういうても、東の方にあるアメリカは、すぐに銃をぶっ放すところで、理想郷じゃないし、南の方の東南アジアなんか、ワシ、ご飯が合わんかもしれんし、北の方のロシアは、核兵器使うかもしれんでえ、云うて怖いし、西の中国も、共産党の云うこときかんかったら、すぐに逮捕されて拘束されそうで、これも怖いし、本当に、海の向こうに理想郷あるん?」
「実際に理想郷があるかどうかやないんや。古代の日本人は、海の向こうに理想郷がある、と思うたんやな。その意味では、まさに、アンサンの云う通り、『常世の国』は『どこよ?』ちゅうことやな。せやけど、『ケン田島』やない『田道間守』が派遣された『常世の国』は、実際のところは、今の中国南部からインドの辺りやった、ちゅうことのようなんや」
「おお、ようよう話が、『タジマ』さんに戻ってきたのお。アンタ、話が長いで」
「なにいー!」
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「(アイツが話を混ぜっ返すから話が、あらぬ方向に行ってしまっているのに、こっちを非難するなんて!)」
と、憤慨するビエール・トンミー氏は、両方の鼻腔を広げるだけではなく、寮の拳を握りしめ、自らの大腿部に強く押し付けた。
(続く)
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