「(だけど、どうして、アイツから今、プロレス話を聞かされなくちゃいけないんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏が、ふと冷静になった時、友人のエヴァンジェリスト氏から、話を元に戻すような、戻しきらないようなiMessageが届いた。
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「要するにの、『猪木』や『猪木』の弟子たちじゃないようなある種のプロレスーいうかある種の『武闘家』は、『コリア・グラフト・タンバリン』で、リングの中でダンス、まあ、振り付けのある踊りをしとるようなもんじゃけえ、ある種の『舞踏家』みたいなところがある、いうことなんよ」
「せやから、プロレスラーがタンバリン持ってダンスしてもせんでも、ワテにとっては、どっちでもかまへんのや。何で、プロレスのこと聞かされんとあかんのや?」
「そりゃ、アンタが、『舞踏家』の『伊藤道郎』を『武闘家』と勘違いしたらいけん思うたけえ、でも、ある種の『武闘家』は、ある種の『舞踏家』と云えんこともないけえ、正確を期す為に、プロレスのこと話したんよ」
「おお、せや!『伊藤道郎』はんのことやった。『伊藤道郎』はんが『鷹』いうか『鷹のような女』じゃあいうことを、アンタに説明させたるとこやったんや」
「『伊藤道郎』はのお、『鷹の井戸』の初演で、不死の水が湧くいう噂の枯れ井戸を守る『鷹のような女』を演じたんよ」
「おお、せやで。よう知っとったのお」
「『伊藤道郎』は、『鷹のような女』で、実際、『鷹』のように踊ったんよ」
「おお、そん通りやで。けどや、なんで、アンサン、『伊藤道郎』のこと話してんのや?」
「なんねえ、アンタが、『鷹の井戸』が『能』じゃあいうことを説明してみい、云うたんじゃないね。その前提として、『伊藤道郎』が『鷹』いうか『鷹のような女』じゃあいうんも説明せえ、云うたんじゃないねえ。忘れんでや」
「おお、せやったな。で、『鷹の井戸』がなんで『能』なんや?」
「アンタも知っとるように、ワシ、文学には興味ないけえ、詳しいことは知らんのんじゃけどね。『イェイツ』は、『能』に興味を持ったんじゃそうなんよ。『イェイツ』は、『ケルト神話』に関心があったみたいなんじゃけど、『ケルト神話』と『能』との間には、幻想性とか様式美とか共通性があった、みたいなことなんじゃろうかねえ。で、『能』的な要素を取り入れて書いたんが、『鷹の井戸』らしいんよ。『伊藤道郎』も、『イェイツ』と一緒に『能』を研究もしたいうて聞いたことがあるけえ」
「アンサン、『イェイツ』のこと、よう分っとうやないか」
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「(アイツ、やっぱりただのオゲレツではないんだ。フランス文学専攻とはいっても、やはり文学修士だからな)」
と、ビエール・トンミー氏は、今更ながら友人のエヴァンジェリスト氏への評価の思いを抱いた。
(続く)
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