「(あ、いかん、いかん。アイツに騙されるところだった。アイツは、自分でも云う通り、文学修士だが文学には興味がない男だ。『イェイツ』のことだって、どうせネットで調べたんだろう。アイツ、凄腕のデジタル・ハンターだからな)」
と、ビエール・トンミー氏が、友人のエヴァンジェリスト氏を評価する思いを脳から振り払うように、頭をブルブルと左右に振った時、エヴァンジェリスト氏から、肝心の言葉を入れたiMessageが届いた。
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「いや、ワシ、『イェイツ』のことなんか全然知らんけえ。『眞一』には到底敵わんけえ」
「おー!せやった、せやった。『眞一』や!ようよう、『眞一』に戻ってきたで。『真一』と書くより、『眞一』と書いた方が、由緒ありげやで」
「アンタあ、さっきから、『眞一』、『眞一』て、呼び捨てにしとるけど、それ、どうかあ思うで。でも、『ショーシン』云うんも、止めてえや」
「はああ?また、妙なこと云い出しよったで。なんや、『ショーシン』て?ワテが、『小心もん』やとでも云うんかあ!?」
「『ショーシン』て、『小心もん』じゃないんじゃけど、アンタが『小心もん』なんは事実じゃろうがあ」
「なんやて!ワテのどこが『小心もん』や云うんや!?」
「ほいじゃったら、アンタあ、『プロの旅人』のアンタのアイコラ画像を奥様に見せられるんねえ?」
「あ、あ、アホ抜かすんやないで!あないなモン、家内に見せる訳にはいかへん!」
「ほーれ、アンタ、『小心もん』じゃないねえ」
「ちゃうんや。あないなモン、家内に見せる訳にはいかへん云うんは、穢れちゅうもんを知らん家内の眼や脳ミソを、あないなオゲレツなもん見せて、汚す訳にはいかんのや」
「ほんなら、なんで、NHKの『ヒューマニエンス』の『”体毛”を捨てたサル』の録画を自分のとこのHDレコーダーに残せんで、ワシが録画したんをBDに焼いて渡してくれ、と頼んだん?」
「あ、そりゃ、まあ、そのお、ほれ、録画を間違って消してもうたんや」
「番組内で流された映画で金髪女性の『インモー』が映ったんを、コマ送りで確認しとったんじゃろ?!」
「いや、それは、西洋絵画の研究の一環としての『インモー』の描写に関わる映像として、よー確認しとかなあかん、と思うたからなんや」
「ほいでも、アンタあ、カモフラージュの為に、『ヒューマニエンス』の他の回も幾つか同じBDに焼いて欲しい、とワシに頼んだじゃろうがあ」
(参照:【ビエール先生の『クラス』講座】Eクラスな男・NGクラスな男[その114])
「そりゃ、万が一、家内が誤解したらアカンからや。で、どっちにしてもや、アンサン、『ショーシン』いうんは、『小心もん』いうことやないんやろ?ほな、なんやねん、『ショーシン』て?」
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「(ああ、ボクは知っている。確かに、ボクは『小心もん』なんだ…)」
と、ビエール・トンミー氏は、部屋の壁にかかった鏡の中の自分を凝視めた。
(続く)
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