「(いやいや、アイツのことだ。そんな単純な展開じゃあないだろう。そうだ!『トビウオ』から『あご』、『あご』から『猪木』という風に話を持っていくつもりかもしれん)」
と、ビエール・トンミー氏が、猪木ばりに顎を突き出して見せる友人エヴァンジェリスト氏の顔を思い出していると、そのエヴァンジェリスト氏から窘められるようなiMessageが届いた。
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「アンタあ、ちーたあ、他人の話を真面目に聞きんさいや。なんで、サッカーから料理の話なんかせんといけんのん。そうしようと思うたら、『セルティック』の『古橋亨梧』は、水泳の『古橋廣之進』とは関係ないんじゃけど、『古橋廣之進』は『フジヤマのトビウオ』と云われとって、『トビウオ』は、別名『あご』で、料理に使う『あごだし』に使われるけえ、というように回りくどい説明をせんといけんじゃないねえ」
「回りくどい説明しとるやないか」
「問題はのお、『古橋廣之進』でも『古橋亨梧』でもないんよ。『古橋亨梧』が所属する『グラスゴー』のチーム『セルティック』と、同じく『グラスゴー』にある『レンジャーズ』なんよ」
「そないなん、どうでもエエ。『オータニさん』のおる『エンゼルス』やったら別やけどな。でも間違えんやないで、サッカーより野球の方が好きや、云うことやないんや。興味あんのは、野球ちゅうより『メジャー・リーグ』や。ワテ、日本のプロ野球は好かん。日本のプロ野球を見とるが、ダサイ、ダサイで。ビーャラ、ピーヒャラ、ドン、ドンで五月蝿いし、広告だらけの球場で、頭が大きくて胴の長い選手が野球やっとる。静かで綺麗な『メジャー・リーグ』の球場でスマートな選手が野球やっとる『メジャー・リーグ』と大違いやで」
「個人の感想です」
「ホンマのこと云うて何が悪いねんな?!」
「じゃけえ、問題はのお、野球じゃあないし、サッカーそのもんでもないんよ。『セルティック』は、『アイルランド』からの移民でカトリック教徒系のクラブ・チームで、『レンジャーズ』は、『スコットランド』の宗教改革で誕生したプロテスタントの長老派教会のクラブ・チームらしいんよ。で、そこには凄い対立感情があるみたいなんよ」
「日本じゃ考えられへんよおな事情やな」
「『セルティック』ファンのパブがようけえある地区なんかに行くと、アイルランド共和国の旗があっちこっちに飾られとったり、パブではIRA(アイルランド共和軍)の歌が大合唱されとるということを書いとる人もおるくらいなんじゃけえ。ほいじゃけえ、『アイルランド』は『アイルランド』で、『スコットランド』は『スコットランド』とか、『アイルランド』でも『スコットランド』でもどっちでもかめへんとか、簡単に割り切る、いうか、投げやり、いうか、そうような人情の機微を考えんようなことは云わんで欲しいんよ」
「ワテは、やり投げはしたことあらへんで」
「オンドリャー!」
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「(おおーっと、アイツ、広島ヤクザになりおったな)」
と、ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏の剣幕に思わず両肩を窄めてみせた。
(続く)
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