「(『escalier roulant』て、なんか『エスカルゴ』みたいな感じもするから、フランス語かなあ….でも、それがエスカレーターとどう関係するんだ?あ、動きが遅いエスカレーターか?いや、『エスカルゴ』、つまり、カタツムリって、エスカレーターが回ってるように、殻が渦巻いているから、そのことでも云っているのか?)」
と、ビエール・トンミー氏が、外れたような、結果として外れていないような想像を、まさに巡らしていると、友人のエヴァンジェリスト氏から、それを見透かしかのようなiMessagaeが入った。
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「『は?』云うて、知らんふりしとるけど、SNCFの大家であるアンタのことじゃけえ、本当は解っとるんじゃろうが、『escalier roulant』は、勿論、フランス語じゃけど」
「おお、せやで」
「ゆっくり動いて、殻が渦巻いとる『エスカルゴ』のことじゃあ、勿論、ないんよ」
「当り前やないけ」
「でも、渦巻く、いうんじゃあないけど、『roulant』は、『回る』とか『転がる』、『巻かれる』いうことじゃろ?」
「おお、解ってんやないけ。せやで、『roulant』は、『回る』とか『転がる』、『巻かれる』や」
「で、『escalier』は、『階段』じゃけえ」
「おお、せやで、『escalier』は、『階段』や」
「で、詰まるところ、『escalier roulant』は、『回る階段』いうようなことよね。つまり、『エスカレーター』じゃね」
「さすが、天下の『OK牧場大学』のフランス文學修士のアンサンも、分ってたんやな」
「『車椅子』も、『fauteuil roulant』で、『転がる椅子』いう感じじゃろ」
「おお、そや、そや、そやったのお。『車椅子』は、まさに車で動いてく椅子やからな」
「での、『エスカレーター』は、『escalier mécanique』とも云うじゃろ」
「おお、そうも云うなあ」
「『mécanique』は、『機械の』じゃけえ、『機械式階段』いうことじゃね」
「ああ、『メカニック』は、ワテでも分かるで。あ、いや、『mécanique』が『機械の』やいうんは、まあ、フランス語分らんお人でも分るやろな、いうことや。で、おフランスでは、その『回る階段』、『機械式階段』では、右側に立って、左側を空けるさかい、大阪と同じや。つまり、フランスは関西人の味方、とアンサン、云いたいんやろ?」
「『エスカレーター』で、右側に立って、左側を空けるのは、何もフランスだけじゃないじゃろ。アメリカとかイギリスなんかでもそうじゃろう?」
「んん、あ、せやかったもしれへんなあ」
「じゃけえ、違うんよ」
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「(ああー!アイツ、自分から、『escalier roulant』とか、持ち出してきておいて、今更、違う?それが、関係ないって云うのか?)」
と、ビエール・トンミー氏の脳裡には、いつまでたっても昇りきらないエスカレーターに乗らされ、苛立ちか絶望か分らぬ感に襲われている自らの姿が浮かんでいた。
(続く)
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