「(ふん!、アイツは、自分のフランス語力を披露したいが為だけに、関係ないスカレーターのことを持ち出してきたんだ。ボクのことを、SNCの大家と持ち上げているようで、ボクが実際にはフランス語は、『il』と『elle』しか知らないことを知っていて、バカにしてるんだ!)」
と、ビエール・トンミー氏が、自らが手に持つiPhone14 Proの画面の向こうに見える、北叟笑む友人のエヴァンジェリスト氏の顔に怒りの眼差しを向けた時、そのエヴァンジェリスト氏から、ビエール・トンミー氏の想像通りの、苛立ちを誘うようなiMeessageが届いた。
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「SNCFの大家であるアンタは、知っとるじゃろうけど、フランスでは、『マクド』なんじゃとねえ」
「ほおお。あ…せや、『マクド』やったな」
「おお、やっぱり知っとんじゃね。実際、フランスのマクドナルドのスマートフォン用アプリの名前は、『McDo+』じゃしね」
「おお!せやさかい、アンサン、『フランスは関西人の味方』や云うたんやな。でも、なんで、フランスやと『マクド』云うんやろ?そこんとこ、アンサンに説明させたる」
「え、アンタ、ワシに花を持たせてくれるん?」
「まあ、友だちやさかいな」
「元は、『サバ』なんよね」
「『サバ』?ああ、なんかフランス人は、挨拶みたいに、よう『サバ』、『サバ』云うとるんやったな」
「アンタも、パリに行った時は、パリジェンヌたちに『Ça va?』云うとったんじゃろ」
「『Ça va?』?ああ、云うとったで。フランス人たちは、余程、『鯖』好きなんやなあ、思うたで」
「ふふ……アンタあ、さすがじゃねえ!」
「え?あ、いや、『Ça va?』は、勿論、魚の『鯖』やあらへん。けど、『サバ』と聞くと、どないしても、青光りした『鯖』を思い出すんや」
「でも、今、フランス人たちは、余程、『鯖』好きなんやなあ、思うた、と云うたんは、それだけじゃないんじゃろ。アンタ、ほんとさすがじゃねえ!」
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「(アイツ、どう意味だ?ボクのことを本当に褒めているのか?いや、アイツのことだ、褒めているような言葉を云って、その実、バカにしているんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、自らの唇をキュッと噛み締めた。
(続く)
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