「(いや、だけど、アイツ、あの時の『合コン』、と云ったな。あの時って、いつだ?いつのことだ?いや、そもそも…)」
と、ビエール・トンミー氏が、あの時も何も、『合コン』も何も、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏の娘、『虫娘』には会ったことがないことに気付いた時、エヴァンジェリスト氏からもそのことを知らせるiMessageが入った。
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「アンタあ、そもそもワシの娘に会うたことないじゃないねえ」
「せやで。なのに、アンサンが、ワテと『虫娘』が『合コン』した云うてきたんやないか」
「そうようなこと云うとらんで。あの時の『合コン』のことを話そうとしただけじゃないねえ」
「せや、そこで『そよかぜ』云うて、『虫娘』のことを話そうとしたやんけ」
「はああ?何、云うんねえ。『そよかぜ』云うたけど、それ、娘のことじゃないじゃないねえ。『そよかぜ』は、新宿にあった『ステーキハウスそよかぜ』のことよおねえ。そこで、『合コン』したん覚えとらんの?」
「覚えとらへんで」
「『ステーキハウスそよかぜ』は、2017年に閉店したそうなんじゃけど、西新宿1丁目の『明宝ビル』の地下にあったんよ。ワシが、『新銀行東京』に行った時にゃあ、まだあったんよ」
「『新銀行東京』かあ、なんや聞いたことあるなあ。確か、『石原慎太郎』が作ったんやなかったかいな?」
「そうよね。『石原慎太郎』が、都知事の時に強引に設立したんよ。じゃけえ、『石原銀行』とも呼ばれとった」
「ああ、聞いたことあるで。『新銀行東京』て、けったいな名前やで」
「個人の感想です」
「『石原慎太郎』のデビュー作は、『太陽の季節』やったやろ?興味ないさかい読んだことあらへんけど、せやったら、『太陽銀行』にでもしたらよかったんやないか」
「そりゃ、いけんよお。あ、でも、『ホエールズ』とは関係ないけえね」
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「(『ホエールズ』?なんだ、それは?『鯨』か?『鯨』と銀行とどんな関係があるんだ?)」
と、ビエール・トンミー氏は、不覚にも、鯨のようにも見える燕尾服を着た紳士が、銀行に入っていく姿を想像してしまい、頭を振って、その像を脳内から消した。
(続く)