「(アイツ、オゲレツなくせに、時に、妙に真面目になって、しかも、コトの関係者であるかのように詳しく事情を語ってくることがある。オゲレツで来られるのも面倒臭いが、真面目にくどい説明をして来られるのも面倒臭い。どっちにしても面倒臭い男だ)」
と、ビエール・トンミー氏が、iMessageの画面上部に表示されたアイツこと友人のエヴァンジェリスト氏のお惚け顔が、『François MAURIAC』を論じる時の眉間に皺を寄せた真面目顔にモーフィングしていくような感覚に襲われていると、どちらの顔の友人からか判然としないiMessageが届いた。
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「アンタあ、政治介入は好かん、云うけどのお、介入したんは、アンタの友だちじゃあいう噂のある総理大臣じゃないん?新横浜の蕎麦屋の『角平』で、あの総理大臣が好きな名物の凄い分厚いカツ丼をアンタも一緒に食べたりして、『十八銀行』と『親和銀行』が合併のことも聞いとったんじゃないん?」
「ああ、あの男か。あないな男は、ワテの友だちやあらへん。総理大臣なんちゅうヤクザな商売なんかせんと、真面目に地道にガスの検針の仕事をしたらえかったんや。あ!『カツ丼』や!アンサン、今、『カツ丼』云うたな。せや、『カツ丼』や!」
「どしたん?いきなり叫んで」
「あんなあ、ワテらが話してたんは、『ガス男』のことや地銀の経営統合のことやないんや。『カツ丼』のこと、話してたんや。『ソースカツ丼』は『早稲田』出身ちゅうことなんやろ」
「ほうでえ。アンタ、よう理解しとりんさるのお」
「『早稲田』出身の『カツ丼』は、『ソースカツ丼』だけやあらへんで。『普通のカツ丼』も『早稲田』出身なんや。『三朝庵』ちゅう蕎麦屋が早稲田にあんねん。卵でとじた『普通のカツ丼』の発祥の店や。店主が、トンカツが余って困っとったら、『早稲田大学』の学生が、卵でとじてみたらどないや、云うてくれたけえ、試してみたら評判になったんやて」
「その『早稲田大学』の学生は、関西出身やったん?」
「へ?なんでや?」
「じゃって、『卵でとじてみたらどないや』いうんは、関西弁じゃろ」
「アホンダラ!そないなことどうでもエエんや。要するに、『普通のカツ丼』も『早稲田』出身やちゅうことなんや。アンサン、知らへんかったやろ」
「でも、その『三朝庵』はもう5年前(2018年)に閉店したみたいじゃけどねえ」
「え???ほうなんか?!あ!アンサン、急いでデジタル・ハンターしたんやな」
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「(アイツー!惚けたフリして、結構、負けず嫌いだからなあ)」
と、ビエール・トンミー氏は、惚けた顔をすることも忘れ、MacBookProに向かってネット検索する友人のエヴァンジェリスト氏の姿を想像した。
(続く)
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