「(『ソースカツ丼』の店なんて、早稲田にあったかなあ…あ!ああ、ナントカ亭の主人のことだな)」
と、ビエール・トンミー氏は、したり顔で肩頬を少しく歪め、友人のエヴァンジェリスト氏に『したり』なiMessageを送った。
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「なんや、そういうことかいな。それならそれで、もっとはっきり云わんかい」
「え?『ソースカツ丼』が『早稲田』出身じゃあいうこと知っとたんねえ?」
「ああ、福井の『ソースカツ丼』のナントカ亭の主人が、『早稲田大学』出身いうことなんやろ?」
「え?『森下弘一』さんは、『早稲田大学』出身なん?」
「『森下弘一』はん?また、新しい名前出してきよったでえ」
「『佐佳枝亭』の店主は、『森下弘一』さんじゃあ思うんよ。で、多分、『森下弘一』さんは、『大名町通り商店街』の理事長もしとってじゃあないかあ思うけど、『早稲田大学』出身じゃとは知らんかったでえ」
「いや、ワテも知らんがな。アンサンが、『ソースカツ丼』が『早稲田』出身や、と云うさかい、『ソースカツ丼』を出しとるナントカ亭の主人が、『早稲田大学』出身いうことなんやないかあ、思うただけや」
「ワシが云うた、『ソースカツ丼』が『早稲田』出身じゃあ、いうんは、その通り、『ソースカツ丼』自体が『早稲田』出身じゃあ、うことなんよ。『ソースカツ丼』は、『早稲田』にあった『ヨーロッパ軒』が始めたらしいんよ。じゃけど、関東大震災があって、故郷の福井に戻って、そこでまた『ヨーロッパ軒』を開いたんじゃと。そこから、福井じゃあ、『ソースカツ丼』が広まったらしいんよ。『ヨーロッパ軒』は今でも、『福邦銀行』の眼の前にあるんよ」
「ああ、それで、『ソースカツ丼』は『早稲田』出身ちゅうことなんやな」
「でものお、『ヨーロッパ軒』は今でも、『ヨーロッパ軒』じゃけど、『福邦銀行』はいうとのお、今でも『福邦銀行』なんじゃけど、もう『福邦銀行』じゃあないんよ」
「あんなあ、アンサン、天下の名門大学『OK牧場大学』を卒業して、更に、『OK牧場大学』の大学院修士課程まで終了したインテリやろ、オゲレツやけど」
「その云い方はおかしい思うで。『インテリ』と『オゲレツ』とが相対立するような概念みたいじゃないねえ」
「『オゲレツ』で『インテリ』なんは確かやないか。『福邦銀行』ちゅう銀行のことは、ワテは全く知らへんけど、アンサンみたいな『インテリ』はんが、その『福邦銀行』のことで非論理的なこと云うんやないで。『福邦銀行』は『福邦銀行』やけど、もう『福邦銀行』やあらへん、て意味分らへんで。論理の崩壊やで」
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「(あ!しまった。また話を変な方向に逸らされてしまった。でも、非論理的なことを云われたままだと気持ち悪いんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、思考上の気持ちの悪さが身体にも影響を与えたかのように、椅子に座った臀部をもぞもぞと動かした。
(続く)
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