「(問題は、何が『普通』かじゃない。騙されんぞ。問題は、『普通のカツ丼』とは何か、いや、『普通ではないカツ丼』ってどんなカツ丼か、いや、そもそも『普通ではないカツ丼』なんてあるのか、だ……あれ?)」
と、ビエール・トンミー氏が、知らぬ間に自らが藪の中で方向を見失っているような状態になっていることに気付いた時、友人のエヴァンジェリスト氏から、進むべき方向を示すような、はたまた新たな藪へと導くかのようでもあるiMessageが入ってきた。
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「確かのお、『佐佳枝亭』じゃったと思うんよ」
「は?なんや、そのナントカ亭いうんは?『古今亭』とか『三遊亭』なら知ってへんこともないけどのお」
「やめてえや、話を逸らすんは。ワシ、落語家のこと云うとるんじゃないけえ、真面目に話してえや」
「アンサンにそれ云われとうないでえ」
「『佐佳枝亭』は、福井市にあるんよ。『ホテルフジタ福井』の前のチンチン電車の通りを『福井地方裁判所』の方に少しだけ行った左側にあるんよ」
「なんや、落語家やのうてなんかの店なんやな。名前からして和食の店やな」
「なんじゃあ、アンタあ、やっぱり知っとったんじゃね。『佐佳枝亭』に行ったことあるん?福井で泊ったんは、やっぱり『福井ワシントンホテル』じゃったん?福井駅からは少し離れたところにあるけど」
「いや、福井には、行ったことあらへん。でも、なんでいきなり『福井ワシントンホテル』になんのや?どうせ訊くんなら、『ホテルフジタ福井』に泊ったんか、やないんか。まあ、福井には行ったことないさかい、どっちも泊ったことはあらへんのやけど」
「ああ、『福井ワシントンホテル』は、2009年頃に、『ホテルフジタ福井』に名前を変えたんよ」
「そないなこと知るかいな」
「なんで名前変えたか、知っとる?」
「やからあ、知るかいな、云うてるやろが」
「天皇が植樹祭に来るけえ、じゃったんよ。福井市には、『シティホテル』らしい『シティホテル』がのうて(『ユアーズホテル』いう結構ええ一応『シティホテル』が福井駅の近くにあるにはあったんじゃけど、『ユアーズ大手ビル』いうビルの中にあるホテルで、一見、どこにホテルがあるんか分からん感じのホテルじゃったけえね)、『福井ワシントンホテル』は、『ワシントンホテル』の中ではかなりいい方のホテルで、天皇もそこに泊まるしかなかったんじゃろうと思うんよ。でも、『ワシントンホテル』じゃあ、『ビジネスホテル』で天皇が泊るんにはマズイけえ、『ホテルフジタ福井』に名前を変えて、『シティホテル』に見せかけたんよ。『国民の象徴』なんじゃけえ、一般の国民がまさに普通、よう泊るような『ビジネスホテル』に泊まりゃあエエ思うんじゃけどのお」
「アンサン、迂闊なこと云うて、不敬罪になっても知らんで」
「ワシ、婦警さんに捕まるようなことしとらんで」
「アホンダラ!....にしても、ワテ、福井のホテルのことなんか、どうでもエエで。行くこともあらへんやろし」
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「(それに、福井って、どこにあるのかもよく分っていないんだ。北陸だろうということくらいは分るんだが…)」
と、ビエール・トンミー氏は、両眼の黒眼を上にあげ、その先に日本地図を思い浮かべた。
(続く)
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