「(『ヒモ』くんは、立派な『ヒモ』らしく『クラウン』の最上位車種の『Royal Saloon』を買ってもらい、その『クラウン』を誇っていたはずだ。なのに、アイツ、なんで、『ヒモ』くんの『クラウン』のナンバーのことで嘆いてきてるんだ?いや、そもそも、クルマのナンバーのことなんかどうでもいいんだ。そうだ!アイツとは、『ヒモ』くんが『ヒモ』だと話してたんだ。『ヒモ』だけど、そう、『ゼゲン』ではないと。なのに…)」
と、ビエール・トンミー氏が、乗ったこともない『ヒモ』くんの『クラウン』の『Royal Saloon』の回りをエンドレスに周っている感に襲われていると、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏から、意味不明な数字のiMessageが届いた。
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「『0919』」
「は?なんや、『0919』て?『オク!イクー!』やあらへんやろな?ソレ、えろうオゲレツやで」
「なんねえ!ワシ、怒るどお!なんで、『ヒモ』くんが、そうようなオゲレツな番号を愛車に付けるんねえ!」
「あ、せやった。『ヒモ』くんのクルマのナンバーやったな。アンサンやなかった」
「ワシのクルマ(自転車)の番号は、マンションの駐輪場札に付いとる『27』じゃけえ」
「それ、いらん情報や。要するに、何なんや、その『0919』は?」
「誕生日なんよ」
「『ヒモ』くんは、9月19日生れやったんか」
「違うよおね。娘のよ。『ヒモ』くんの娘の誕生日なんよ」
「ああ、一人娘やったかなあ?」
「そうよお。『ヒモ』くんが、母親と自分とを棄てたように思うとる娘の誕生日なんよ」
「ああ、『ヒモ』くんは、65歳で熟年離婚しはったんやったな」
「個人情報になるけえ、詳しいことは云えんけど、前の奥さんとのことでは色々あったんよ。娘は、『ヒモ』くんがいけんかったと思うとるんじゃけど、本当は違うんよ。でも、真実を話すと、娘は、今度は母親不信に陥って苦しむことになるけえ、『ヒモ』くんは黙って、自分をワルもんのままにしとったんよ」
「『ヒモ』くんは、優しい人やったからなあ」
「じゃけど、その前の結婚生活と娘からの誤解が『ヒモ』くんを苦しめた、とワシは思うんよ。それで、『ヒモ』くんは、『身体表現性障害』に苦しむことになったんじゃ」
「ああ、そのナントカ障害は、肉体的にはどこも悪うないのに体が不調になる、いう病気やったなあ」
「しかも、『ヒモ』くんは、亡くなったその年にも、娘から結構キツーいメッセージをもろうとったんよ。でも、『ヒモ』くんは何も云い返さんかったんよ。クルマのナンバーを娘の誕生日にする程に好きなその娘からそんな仕打ちを受けて、『ヒモ』くんはどれだけ辛かったじゃろう…それなのに、アンタあ、なんねえ、『オク!イクー!』云うてえ!」
「お、お、おお、すまん、すまん」
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「(そう、『ヒモ』くんは、辛い半生を過ごしてきたんだ。今の奥さんが、とてもいい人で、最期は、経済的にも精神的にも幸せな『ヒモ』生活を送れて良かったけど)」
と、ビエール・トンミー氏は、笑顔でいたことしか思い出せない『ヒモ』くんの背後で揺らぐ『ヒモ』くんの影を思い、キュッと喉が閉まった。
(続く)
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