「(でも、『ソースカツ丼』なら元々、知ってたんだ。)』
と、ビエール・トンミー氏が、記憶の底から『ソースカツ丼』を取り出し、眼前に浮かばせた時、友人のエヴァンジェリスト氏から、その記憶を辿らせるiMessageが届いた。
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「アンタあ、『ソースカツ丼』食べたことあるん?福井には行ったことないんじゃろ?あ!そうかあ、福井出身のオナゴと付き合うて、『ソースカツ丼』を作って食べさせられたんじゃね!」
「勝手に妄想したらええがな。でもな、ワテが、『ソースカツ丼』食べたんは、福井やあらへん。岡山なんや」
「ああ、アンタの社会人スタートの地であり、社会人の『男』としてのワルサをした最初の地じゃねえ。その岡山で『初物』を『食べた』んじゃね」
「アンサンが云うと、なんやイヤラしゅう聞こえるけど、そう、岡山で初めてカツ丼食べた時に、ビックリしたんや。ご飯の上にトンカツがあってソースが掛けてあんねや。キャベツまであったで。ソレが『ソースカツ丼』やろ?アナイもん。カツ丼とチャウで」
「ワシも『佐佳枝亭』でカツ丼(今にしてみりゃ、『ソースカツ丼』じゃ)を見た時は、びっくりしたんよ。でも、後で知ったんじゃけど、福井でカツ丼いうたら『ソースカツ丼』が『普通のカツ丼』らしいんよ」
「岡山の『ソースカツ丼』は、福井から伝わってきたんやろか?いや、岡山と福井が関係あるやなんて、聞いたことないで」
「え?岡山と福井は深い関係があるじゃないねえ」
「あんなあ、ワテ、福井と石川と富山の位置関係もあんまし分ってへんし、実のとこやけど、富山と福井の区別もちゃんとついてへんのや。黒部渓谷に観光に行ったことあんのやけど、あれは、福井なんやろか富山やんやったんやろか?それとも石川かいな」
「『石原裕次郎』にでも訊いてみんさい」
「『黒部の太陽』やな。まあ、どっちゃにしても、福井も石川も富山も北陸地方やいうことくらいは分ってんねん。岡山とはちょっと離れてるで」
「『福井優也』は、岡山出身なんよ」
「はあ?また訳の分らん奴出してきたでえ」
「『訳の分らん奴』いうんは、『福井優也』に失礼じゃろ」
「アンサン、ほんま、ようこじつけてくるなあ」
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「(福井県の話をしているのに、『福井』という名前の人間を持ってくるのは、まあ、いつもアイツのやり口だ)」
と、ビエール・トンミー氏は、独り、合点した感を二、三度の頷きで、誰に対してと云うことでもなく表した。
(続く)
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