2023年12月15日金曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その337)

 


「(だけど、そう、鮮明に覚えている。『若人号』で東京まで行ったんだ。ボクは、『3ホーム』で、アイツは、『4ホーム』だったから、車両は別、隣の車両だったけど、アイツだって一緒に行ったんだ)」


と、ビエール・トンミー氏は、『クラス』を『ホーム』と呼ぶ『広島皆実高校』の生徒時代に戻った感覚に囚われ、饒舌なiMessageをアイツこと友人のエヴァンジェリスト氏向けに打ち始めた。



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「せやで、ワテらの東京への修学旅行は『若人号』いう修学旅行専用列車やったんや。ワテらは、『座って』、『夜行で』東京-広島間を往復したんや。帰りの日は、東京タワーの食堂でトンカツの夕食を『ナイフとフォークで』食べて、また『若人号』に乗って、翌朝、明石の辺りで朝ご飯のお弁当を食べた事を覚えてんでえ」

「アンタあ、ほんまに『ミスター・メモリー』じゃねえ。ワシなんか、『広島皆実高校』の修学旅行で覚えとるんは、小諸の蕎麦屋で、『川端康成』が座った席で、その横に飾ってある写真の通りの『川端康成』と同じタバコを指に挟んで持ったポーズをとったことだけじゃ。それも、『川端康成』に興味もないのにのお」



「考えたら、『座って』、『夜行で』東京-広島間を往復したいうんは、凄いことやで。今は広島に行く時は飛行機が当り前やけど(新幹線で広島まで行くのは辛いさかいなあ)、ワテらが高校の頃は、広島から東京まで夜行列車で往復するんは、そないに驚くことやあらへんかったんや。そのこと驚くで」

「ああ、新幹線は、まだ広島まで来とらんかったんよねえ?」

「新幹線は当時、まだ大阪まで(新大阪やな)しか来てへんかったんや。岡山まで来たんが、ワテらが高校3年の年や。ワテ、最近また小津安二郎の『東京物語』を見たんやけど、上京しとった年老いた両親は(主人公の『笠智衆』と『東山千栄子』やな)、東海道線21時発「廣島」行きの急行列車(3等)で尾道に帰るんや。『東京物語』は、昭和28年度芸術祭参加作品なんやで。ワテらが生まれた頃に作られた映画や。ワテらの高校の修学旅行の頃も、昭和28年の頃と同じで、『広島-東京』間を夜行列車で往復するような時代やったんや。それも、『座って』やで」

「ほうじゃねえ。寝台列車なんか贅沢な感じがしとったような気がするで」

「『東京物語』の年老いた両親は、子どもたちと東京駅待合場所の『廣島行』と書いた看板のところに、長蛇の列で並んで座ってんねん。時間は、20時過ぎや。昔は、列車に乗るのに、こうやって何十分も前から並んでいるのが当り前やったんや」

「時間の感覚が、今とは違っとったような気がするのお」


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「(そうだ。時間がもっとゆったりと流れていたんだ)」


と、ビエール・トンミー氏は、珍しく友人のエヴァンジェリスト氏の言に同意し、昔の時の流れと同じようにゆったりと大きく頷いた。


(続く)






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