「(いや、ボクがいくら変態だといっても、女装してスチュワーデスと、なんて)」
と、ビエール・トンミー氏が、自らの女装姿をに寒気を感じながらも、スチュワーデスとのあらぬ想像に、自身の『ある部分』だけは熱くさせていると、友人のエヴァンジェリスト氏から、その熱さを引かせるような、もうあまり聞かなくなった言葉のiMessageが入ってきた。
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「ああ、スチュワードじゃったんじゃね。でも、アンタが、スチュワードしたいうんは聞いたことがなかったのお」
「アンサン、何、云うてんねん?」
「アンタ、 国際線の荷物の取り下ろしのバイトのシフトの『穴』を埋めたんでもなく、女装して、スチュワーデスの『穴』埋めたんでものうて、スチュワードとして(つまり、男装のままで)スチュワーデスの『穴』埋めたんじゃね!」
「オゲレツのようでそうでもないようで、意味不明や。『男装のままで』ちゅう表現もなんか、腸捻転になりそうで、しかも、気色悪いで。それに、『スチュワード』ちゅう言葉、久しぶりに聞いた気がするで」
「ワシも、あの時以来、スチュワードには会うたことがないと思うで」
「『あの時』?」
「ああ、もう30年以上前のことじゃけど、アメリカ出張した時なんよ。ワシ、上司と後輩と一緒にJALでアメリカに行く予定じゃったんじゃけど、京成上野駅まで行くのに乗った自宅近くの駅で乗ったタクシーの運転手さんが、京成上野駅がどこにあるかよう知らんかったんよ」
「それがなんやねん?」
「まあ、聞きんさい。スカイライナーで成田空港まで行くけえ、京成上野駅まで行こうとしたんよ。でも、首都高速が混んで、上野まで行くのにかなり時間がかかった上に、タクシーの運転手さんが、京成上野駅がどこにあるかよう知らんかったけえ、京成上野駅の少し手前で道を間違えてしもうて、結局、乗るはずじゃったJAL便に間に合わんようになったんよ」
「アンサン、話が長いで」
「でも、出張手配を頼んどった旅行代理店に急いで連絡したら、JAL便の代わりに、シンガポール航空の便を手配してくれたんよ」
「おお、シンガポール航空か!シンガポール航空は、エエで。航空会社の人気ランキングで一位の常連や。ワテも、モルディブでダイビングしに行った時に乗ったで。モルディブまで直行便がないさかい、JALでシンガポールまで行って、シンガポールからモルディブ間がシンガポール航空やったんや」
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「(モルディブでのダイビングは、良かった、綺麗な海だったあ)」
と、ビエール・トンミー氏は、自室で虚空に視線を遣り、そこにモルディブの海中を見ていた。
(続く)
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