「(アイツ、ボクが何を話そうとしているか、総て分っていて、聞き間違えた振りをしたり(いや、見間違えた振り、であろうか)、誤解していた振りをしたり(いや、曲解の振りか)、でも、ここで余計なことを云うと、また、アイツの思うツボだ)」
と、なんとか冷静さを取り戻したビエール・トンミー氏は、自分を翻弄してほくそ笑んでいるであろうアイツこと友人のエヴァンジェリスト氏に対して、敢えて、肯定返しのiMessageを送った。
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「あ、ああ、せやで。アンサンの云う通りや。ワテ、『余った』3種類のオプションが気になって仕方のうなったんや」
「で、『血迷うた』んじゃね?」
「せや。もっと云うと、『毒食えば皿まで』や」
「え?アンタ、『桂場』みたいに皿を食うたん!?」
「は?『桂場』?いや、誰や、とは訊かへん」
「じゃあ、ワシも、今放送しとるNHKの朝ドラ『虎と翼』の登場人物で、『松山ケンイチ』が演じとるんじゃ、とは説明せんけえ」
「ふん!松山ケンか愛媛県か知らへんが、別の云い方すると、『当たって砕けろ』や」
「松山ケンイチは、青森県出身じゃけど、『当たって砕けろ』じゃったら、松山ケンイチじゃのうて、『マサ斎藤』じゃね」
「無視、無視」
「ほうなんよ。『マサ斎藤』は、あの時、警官を無視したら良かったんじゃろうのお」
「『あの時』?いや、どの時でもかめへん。いらんでそないな情報」
「アメリカのウイスコンシン州のホテルで、同室じゃった同僚のプロレスラー『ケン・パテラ』が、器物破損容疑で警官たちが部屋に押し入って来た時、それを無視してな~んもせんかったら良かったのに、警官たちをなぎ倒して逮捕されてしもうて、結果、1年半、服役することになったんよ」
「また、プロレスラーの話かいな」
「でものお、『マサ斎藤』のモットーは、『Go for broke』(当たって砕けろ)で、服役したんも、それまでの戦いで痛めた体を休めて鍛え直すええ機会じゃと捉えたんよ。しかも、シャバに復帰後、『監獄固め』いう技も編み出したんじゃけえ、大したもんじゃ」
「知るか!当たって、なんぼでも砕けたらエエねん」
「『巌流島』で負けて砕けても本望だったみたいじゃ」
「『巌流島』?」
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「(しまった!反応してしまった…)」
と、ビエール・トンミー氏は、自室の椅子に座ったまま、両手を下げ、天井を仰いだ。
(続く)
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