「(アイツは、トボけたことばっかり云っているようで、その実、すごく狡猾なんだ。本題は明らかな嘘なのに、同時に、どうでもいいことだが、否定できない事実を並べ、こっちが、本題に対する否定を主張すると、その否定を『否定できない事実』の方へのものとして問うてくるんだ。そうだ、そうなんだ。ちゃんと整理して、何が肯定で何が否定かを説明してやる)」
と勢い込んだビエール・トンミー氏は、その勢いそのままのiMessageをアイツこと友人のエヴァンジェリスト氏に送った。
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「エエか、耳の穴かっぽじって、よう聞くんやで。ああ、ワテは、確かに、高速道路でオシッコを高級ホテルの『ペニンシュラ』のビニールの傘袋の中にしたで、それは事実や。けど、プラモデルの『キャロル』にオシッコはかけてへんのや!」
「何を興奮しとるん?ああ、あのことを云われるんじゃないかあ、と心配なんじゃね?」
「は?あのこと?」
「高級ホテルの『ペニンシュラ』のビニールの傘袋の中にしたオシッコを、その後、どうしたか、いうことよね」
「え!いや、それは…」
「オシッコを終えて直ぐに、傘袋の入口を縛っったじゃろ?」
「当り前や、そないせんかったら、ワテの『Eクラス』の中に溢れてまうやないか」
「で、その後、『Eクラス』のドア開けて高速道路に捨てた、いうことは云わんけえ」
「ば、ば、ばかあ!何、云うねん!だ、だ、誰が、そないな人非人な行為をすんねん!」
「じゃけえ、心配しんさんなや。ワシ、そのこと云わんけえ。アンタあ、オシッコの入った『ペニンシュラ』のビニールの傘袋をちゃんと家に持ち帰って、トイレに流したんじゃろ?そういうことにしとったげるけえ」
「ああ、そうしてくれ。いや、そうやったんや。ちゃんと持ち帰って、適切に処分したんや。多分…」
「ほうよねえ。高速道路に捨てたりしたら、後続のクルマがびっくりしたじゃろうけえ。慌てて避けるんを見て見ぬふりして逃げたりは、アンタはせんかったいうことにしとくけえ」
「そういうことにしとく、やのうて、そういうことはせんかったんや」
「後続のクルマは、避けきれず、シッコ塗れになったかもしれんしのお」
「え!?そうなんか?」
「ふふ。クルマのプラモデルの『キャロル』にもオシッコをかけんかったことにしたげる」
「いや、そっちの方は、ほんまにしてへんのや」
「『そっちの方は』?」
「また言葉尻を捉えやがって」
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「(うっ!)」
と、ビエール・トンミー氏は、自室の椅子につけた尻の左側を上げ、iPhone14 proを持たぬ左手をそこに当てた。友人のエヴァンジェリスト氏に掴まれた感をおぼえたからであった。
(続く)
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