「(ダメだと云っても、それに、誰や、『千秋』て、と聞かなくたって、結局、アイツは、『千秋』について説明してくるんだ」
と、ビエール・トンミー氏が、諦念から。自室の椅子に座ったまま項垂れていると、垂れた頭を上げさせない、予想通りのiMessageが、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏から入ってきた。
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「『千秋』云うたら、『ウッチャンナンチャン』の『内村光良』と『キャイ~ン』の『ウド鈴木』と作ったユニット『ポケットビスケッツ』(今は、活動休止中)のボーカルなんかもしとるタレントじゃないねえ」
「やからあ、ワテは、『松ベンツ』の納車を首を長~うして待ってんのや。それを『一日千秋』と表現しただけで、そのタレントが、『アストンマーティン』乗ってようが乗ってまいが、な~んも関係からへんのや」
「それじゃ、『アストンマーティン』と『千秋』が可哀想じゃ」
「また、余計な情報を云おうとしてんのやろけど、いらへんで」
「『ベンツ』は、『アストンマーティン』にAMGのエンジンを提供しとるし、出資もしとるじゃないねえ。それに、その『アストンマーティン』に乗っとる『千秋』じゃけど、お父さんは、『日本板硝子』の社長じゃっったんじゃけど、『日本板硝子』は、住友グループらしいけえ、アンタにゃ、余り関係ないじゃろうが、叔父さんは、『三菱電機』の社長、会長やった人なんじゃと」
「え?『三菱電機』の?」
「まあ、個人情報になるけえ、言及はせんけど、どうねえ?」
「まあ、関係全くないとは云えへんけど….けどや、誤魔化されへんで。ワテは、もう一遍云うけど、『松ベンツ』の納車を首を長~うして待ってんのや。『首を長~うして』いうんを、『一日千秋』と表現しただけやさかい、『千秋』も『アストンマーティン』も関係あらへんのや」
「おお、意志堅固、『高良健吾』(こうら・けんご)じゃね」
「その手には乗らへん。そのなんとか『健吾』の説明なんかするんやないで」
「なんちゅう、意志堅固、稲妻レッグラリアートの『木村健悟』!あ、『木村健悟』のことをプロレスラーじゃと思うとるじゃろうけど、もうプロレスは引退して、今は、品川区議会議員じゃけえ」
「五月蝿いで。兎に角、2月に注文した車が、ドイツのジンデルフィンゲン工場で完成して、自動車輸送専用船に乗せて、スエズ運河が通れず、アフリカの希望峰(!)周りで、インド洋、マラッカ海峡を越えて、地球を半周して日立に陸揚げされ、芝浦ヤナセまで陸送されて、そこから横浜のワテんちまで来るんやで。ええか、なんとアフリカの希望峰やで。希望峰!バスコ・ダ・ガマの世界や。大航海やで。ワテは、それを一日千秋の思いで、つまり、首を長~うして、待っとんのや」
「じゃけえ、『おお、アンタともあろう者があ』と、ワシ、云うたんよ」
「おお、せやった。で、ワテが、『なんや、文句あんのか!ワテはなあ、一日千秋の思いなんや』と云うてから、話が変になって行ったんや」
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「(そうだったんだ。『一日千秋の思い』と云っただけなんだ。でも、そこから『千秋』なんて何か知らないタレントや『アストンマーティン』に無理無理、話を持って行きやがって。アイツが『一日千秋』という言葉を知らないはずはないんだ)」
と怒りながらも、ビエール・トンミー氏は、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏の惚けた顔のその裏に潜む知性を思った。
(続く)
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