「(アイツこそ、端から『カルメン』がオペラだと分っていて、ボケをかましてきやがったんだ!」
と、ビエール・トンミー氏が、傑作オペラである『カルメン』が、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏のくだらなさすぎるボケに穢されたように感じ、口を窄めて唾を吐き出そうとしたものの、そこが自室であることに気付き、寸前で口を閉ざした時、エヴァンジェリスト氏から、恐怖に慄いているようで、詰まるところは茶化すだけのiMessageが入ってきた。
====================================
「アンタあ、怒っとるんじゃね!すまん、すまん。まあ、ワシ、自分が、何いけんことしたんか分らんけど、アンタ、怒って、ワシのケツの穴に、『ハバネロ』をぶち込んだりせんといてえね」
「なんや?!ぶち込んで欲しいんなら、何本でもぶち込んだるでえ!」
「ワシ、坐薬も入れられんかった男じゃいうこと知っとるじゃろ?やめてえや。ケツの穴は無理じゃけえ」
(参照:【緊急衝撃特報】ナンパ老人、危機一髪![その73])
「ああ、ワテもアンさんのケツの穴、見とうないし、それよりも、肝心なんは、『カルメン』の『ハバネラ』や。ワテ、久しぶりに、『カルメン』の『ハバネラ』聞いた、と云うたやろ。それでやな、今更ながら、衝撃やったんや」
「やっぱり、辛うて飛び上がったん?」
「くどい!『カルメン』の歌いうたら、スペインの塊のそのもんや。それが、フランス語で歌われてんやな。これ、衝撃やで。歌のサビの部分で『カルメン』は。確かに『ラムール:L’amour』と歌っておったで」
「アンタあ、ラーメンに『ハバネロ』じゃのうて、今度は、『ワサビ』入れたん?」
「『ワサビ』もボケもいらんで。『ラムール: L'amour』て、『愛』やな。コレは、スペイン語もフランス語も話せへんワテでも、明瞭に納得デケル言葉や」
「アンタあ、『愛』の巨人、いや、『愛』の巨砲じゃけえね。けど、ワシ、誤魔化されんよ。要するに、『カルメン』はスペイン人なのに、つまり、スペインが舞台のオペラなのに、歌がフランス語なんじゃろ?」
「ああ、衝撃やで」
「じゃったら、生粋の栃木の人が、広島弁を喋ってもええじゃないねえ。『ロジェ・マルタン・デュ・ガール』(Roger Martin du Gard)が、『SNCF』じゃのうて、『JR東日本』の電車に乗って、宇都宮辺りに行って、地元の人から、『ええ名前しとりんさるのお』云われても、な~んもおかしゅうないよおね」
「いや、問題は、その『ロジェなんとか』はんが、なんで、『SNCF』やのうて、『JR東日本』の電車に乗って、宇都宮辺りに行くんや、ちゅうことや?」
「そりゃ、当り前じゃないねえ。『SNCF』は、フランス国鉄で、日本では『SNCF』の電車走っとらんけえ」
「アンサン、ワテに喧嘩売っとんのか!」
====================================
「(いくら友人だからといって、おちょくるような物言いは、許せん!)」
と、ビエール・トンミー氏は、いきりたった自身の頭から、そこに生えてもいない猟犬のような2つの耳が、獲物を見つけた時のようにピンと立つのを感じた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿