「(いや、あ、あ、しまったあ!迂闊なことを、また…)」
と、ビエール・トンミー氏が、一旦はいきりたったものの、直ぐに冷静さを取り戻し、友人のエヴァンジェリスト氏に隙を与えぬよう、自分の方から問題となりそうな点を回収するiMessageをエヴァンジェリスト氏に送った。
====================================
「でも、買わへんで、アンサンが喧嘩売ってきても。『喧嘩売る気かあ』云うたら、『なんぼで買うてくれるん?』とか云うつもりやろけど。その手には乗らへん。それに、ワテ、そないに暇やあらへんのや。もう直ぐ…」
「そうよ、もう直ぐなんじゃろ、『松ベンツ』が届くん?じゃけえ、ワシ、その関係で、つい『ロジェ・マルタン・デュ・ガール』(Roger Martin du Gard)を出してしもうたんよ」
「ああ、せや。問題は、『SNCF』やのうて、その『ロジェなんとか』はんや。なんで、そないなお人のこと云うてくんのや?」
「じゃって、アンタが、『松ベンツ』が、『希望峰』を回ってくる、いうようなこと云うたけえよ」
「ああ、そんことやった。なんで、ほんまのこと云うたら、アカンねん?」
「アンタもあろうもんが、『希望峰』を回ってくる、云うとはのお」
「それのどこが、『ロジェなんとか』はんと関係あんねん?」
「そりゃ、『ロジェ・マルタン・デュ・ガール』の代表作いうたら、『チボー家の人々』じゃろうがいねえ」
「アンサン、まさか、『希望』を『チボー』に引っ掛けたんか?そりゃ、ちーと、いうよりも許されんくらいに強引、いうか、関係あらへんで」
「おかしいじゃろ?」
「なんや、認めんのか?そやで、おかしいで」
「そうなんよ、おかしいんよ。『希望』を『チボー』云うくらい、おかしいいんよ、『キボーホー』を『希望峰』云うんは」
「んは?意味不明や」
「そん通りじゃ。『希望峰』を回ってくる、いうんは、意味不明なんよ」
「ああ、そういうことか」
====================================
「(アイツの話は、まさに『希望峰』回りのように回りくどい)」
と、ビエール・トンミー氏は、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏が、船に乗って『希望峰』を回る様子を思い描いた。
(続く)
0 件のコメント:
コメントを投稿