「(ただ、『パスコ』は懐かしい。パンも美味しかったし、あの娘のことも懐かしい思い出だ)」
と、ビエール・トンミー氏が、口の中と心の中に、健全な甘いものを感じていると、そこに苦味をぶち込んでくるようなiMessageが、友人のエヴァンジェリスト氏から届いた。
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「そうなんよ。そこは、どうでもええんよ、『リサとガスパール』は。ワシを誤魔化しんさんなよ」
「何を誤魔化すいうねん?」
「『食べた』んじゃろ?」
「そら、当り前やないか」
「『パスコだ!ガマンできん』かったんじゃね!?」
「その云い方は、気に入らへんけど、美味しいもんやったさかいな」
「そうように美味しいかったん?」
「ああ、美味かったで」
「齧り付いたん?」
「んん?ちょっと気になる云い方やけど、齧り付いた、いうたら、まあ、そういうことになるんやろな」
「どこから齧り付いたん?」
「どこから?そりゃ、端からやろ」
「ええー!『ヴェリテ』さんの手か足の指からいったん?アンタあ、本当に変態じゃねえ」
「はあーっ!そういうことか!アンサン、また、話をオゲレツに持ってってたんやな。ほんまエエ加減にさらせよ!『ヴェリテ』はんは、清純なお人やったんや。ワテ、『ヴェリテ』はんとは、な~んもあらへんのや。お馴染みになってオマケにパンをくれるようになって一言二言話すようになっただけなんや、と云うたやろ」
「本当にそれだけなん?」
「あ、ある日、電車で偶然、隣りになってよく話したこともあったで」
「偶然?」
「ああ、偶然や。アンサンとはちゃうで」
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「(そうだ。アイツは、好きな女の子が、大学まで通学するのに乗っていたバス路線を調べ上げ、その娘が乗ってきそうな時間を狙って、バスに乗ったんだ)」
と、ビエール・トンミー氏は、アイツこと友人のエヴァンジェリスト氏の若き日の所業を批判的に思い出した。
(続く)
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