2014年7月9日水曜日

【続・足底筋膜炎】バラクとジョンウン、そして、『ワシ』



「これには、やはりアナタが関与しているのですか?」

これは、エヴァンジェリスト氏に訊かないではいられなかった。

「何のことだ?」
「それに、猪木さんが、超党派の国会議員を連れて、今日(2014年7月9日)、北朝鮮に発ちましたが、そこにもアナタが関与しているのですか?」
「これ、だとか、それ、だとか、五月蝿いぞ。『これには』の『これ』と『そこにも』の『そこ』は別物か?」
「猪木さんはまた、来る8/30と8/31に平壌でプロレス大会(「インターナショナル・プロレスリング・フェスティバルin平壌」)を開催するそうですが、そこにもアナタが関与しているのですか?」
「1995年の平壌での大会(「平和のための平壌国際体育・文化祝典」)では、ケンスケ(佐々木健介)とホクト(北斗晶)が参加して、あの二人、それが縁で結婚したんだったなあ。懐かしいなあ」
「え?1995年の時も、アナタが関与していたのですか?」
「ノーコメントだ。事務所を通してくれ」
「今回は、ひょっとしてアナタ自らリングに立つんですか?」
「ノーコメントだ。事務所を通してくれ」

「そして…..それにも、やはりアナタが関与しているのですか?」
「だから、その『それにも』の『それ』とは何なんだ?」
「金正恩(キム・ジョンウン)です」
「ああ、ジョンか?」
「ジョン、と呼んでいるんですか?」
「ノーコメントだ。事務所を通してくれ」
「そうです。キム・ジョンウンです」
「だから、ジョンがどうした?」
「足をひきづっていたそうです」
「それがどうした。ジョンだって、足をひきづることくらいあるだろう」
「アナタが関与しているのですか?」
「はああ?」
「ニュースでは、痛風か怪我か、となっていましたが、私にはピントきました」
「なんだ、妄言か」
「ミスター・モーゲンのアナタには云われたくはないですね」
「もういい加減にしてくれ」
「バラクとおんなじなんですね?」
「うっ……」
「金正恩も足底筋膜炎(ソクテイキンマクエン)なんですね。日本と北朝鮮との二国間だけではなく、米国も合せた三ヶ国での間の調整をなさっているんですね、アナタは?」
「キサマ、正気か?」
「オバマ大統領が足底筋膜炎になったことを、アナタ、お怒りでしたが、あれはポーズだったんですね(【足底筋膜炎】バラクとワシ)」
「それ以上云うと、国際問題になるぞ」
「オバマ大統領も金正恩も足底筋膜炎になり、アナタも足底筋膜炎に罹っている、ということは、偶然であるはずがありません。私には分ります」
「おいおい、国際問題ではなく、国際紛争になるぞ。そうなっても、ワシは知らんぞ」
「米国、北朝鮮、そして日本のキーマンがいずれも足底筋膜炎に罹っているということは、何かの合図なんですね?」
「ノーコメントだ、ノーコメント、ノーコメント、事務所を通してくれ」

慌てたエヴァンジェリスト氏の姿が、何かを物語っている、と見えた。

―――――――――――

「キー」

私とエヴァンジェリスト氏の会話を聞いていたアオニヨシ君が、そんな会話は不毛だと云わんばかりに、鳴いた。






2014年7月6日日曜日

【鹿男】カノジョと元カノとの間[後編]





長崎市は築町で、昼食を摂る為、二人は「和食旬彩いまじん」に入った。

エヴァンジェリスト氏も「人間鹿」ことアオニヨシ君も共に、天丼を頼んだ。


――――――――――


「まあ、要するに、居酒屋で飲んだくれて、酔いつぶれていた女を『連れ込んだ』ってことだな。それが君のカノジョってことだ」

食後のコーヒーを飲みながら、それまでアオニヨシ君にやられ放しであったエヴァンジェリスト氏が反撃に出た。

「違いますよ」
「じゃあ、『連れ込まれたのか』?」
「お下劣ですね。違いますよ。そんな女性ではありません」
「じゃ、どんな女性なんだね?」
「●●●●銀行に勤めてます」
「ほう、メガバンクか。メガバンクに勤めている女は、男を『連れ込む』ことはしない、って云うのか?」
「いえ、そうじゃありません。とにかくそんな女じゃないんです。嫉妬深くはあるんですが…..」
「ほ、ほーっ。君の魅力にメロメロなんだ、ムヒヒヒヒ」
「まあ、どうなんでしょうねえ?しつこいんですよ。長崎に着いてからも何回もメールしてくるんですよ」

確かに、「和食旬彩いまじん」に入るまで歩きながらも、また、「和食旬彩いまじん」の中でも、アオニヨシ君は常にiPhoneを触っていた。

「はああ!?そいつ、本当に●●●●銀行に勤めてるのか!?勤務時間中だろうが!」
「勤務時間中にモト・ヤミシツチョーの部署に油を売りに行っているアナタに云われたくはないですね」
「ほ、ほーっ。カノジョを庇うのか」
「ま、いいじゃないですかッ」
「その『ま、いいじゃないですかッ』はやめろと云ったのが分らんのか。ヒトサシユビKを思い出させるな」
「ま、いいじゃないですかッ」


――――――――――


「和食旬彩いまじん」を出て歩きながら、エヴァンジェリスト氏は訊いた。その質問が、「事件」を呼んだのだ。

「で、結婚するのか、カノジョと?」
「いや、カノジョとは、それはないです」
「何故だ?」
「いやあ、参っちゃいますぉ」

また、iPhoneをいじりながら答えた。

「カノジョからメールか?」
「元カノです」
「なにいっ!元カノ」
「ええ。仕事中なのにメールしてくるんですよ」
「元カノって、どこに勤めてるんだ?」
「●●●●銀行です」
「ええーっ!元カノも●●●●銀行に勤めてるのか。君は、余程、●●●●銀行の女が好きなんだな」
「はあ?元カノって、カノジョですよ」
「なに?なに、なに、なに?云っている意味が分らん」
「今、メールしてきた元カノはカノジョです」
「君、大丈夫か?正気か?元カノがカノジョって、何を云っているのか、分っているか?」
「分ってますよ」
「じゃ、どういう意味だ?」
「もう別れたんです」
「別れた?」
「ええ、別れました」
「君は、たった今まで、カノジョのことを『カノジョ』と云っていたんだぞ」
「ええ」
「それが、一歩、たった一歩歩いただけで、そのカノジョのことを『元カノ』と呼ぶようになったんだぞ、分るか」
「分ります」
「これは、どういうことだ」
「そういうことです」
「その一歩の間に別れたのか?」
「まあ、そういうことにしておいて下さい」
「なんだ、その投げやりな言い方は!」
「ま、いいじゃないですかッ」
「その『ま、いいじゃないですかッ』はやめろと云ったのが分らんのか。ヒトサシユビKを思い出させるな(参照:【行方不明】「あっちゃんも一緒だったんですか?」(その1))
「ま、いいじゃないですかッ」


――――――――――


「これで分っただろう。鶏は三歩歩くと忘れる、というが、鹿が忘れるのは一歩だ、ということが」

確かに、「で、結婚するのか、カノジョと?」という質問に対して「いや、カノジョとは、それはないです」と答えた舌の根も乾かぬうちに、「元カノです」と「カノジョ」の位置付けを変える発言をしたのだ。

「カノジョと元カノとの間」は、そう、一歩なのだ。

厳密に云うと、「いや、カノジョとは、それはないです」と「元カノです」との間には、一歩ではなく、三歩でもなく、四、五歩はあったであろうと思う。

しかし、エヴァンジェリスト氏の感覚では、それは「一歩」であり、そのことは分らぬではない。

エヴァンジェリスト氏は、結局、終始、アオニヨシ君に翻弄されたのだ。可哀想に……いや、ざまあみろだ。

いつもは他人を翻弄させてばかりのエヴァンジェリスト氏を翻弄する人間が(アオニヨシ君のことを純粋に「人間」としていいかどうか分らないが)、ヒトサシユビKの他にようやく現れたのだ。スタア誕生だ。


(オシマイ)












『鹿』が応募?!...『アミューズオーディションフェス2014』。


「応募するんですか、『アミューズオーディションフェス2014』に?」
「ワシが?何故だ?」
「生活苦なんでしょ?(参照:「僕は自殺しない」……..再雇用者の呟き。)」
「それはそうだが…」
「脊山麻理子ばりに、水着のDVDを出そうと考えてるんでしょ。だったら、どこか事務所に入っておいた方がいいんじゃないですか」
「なるほどなあ」

予想通り、その気になってきた。アオニヨシ君に負けじと、エヴァンジェリスト氏をからっかってみたのだ。

「だがなあ、『アミューズオーディションフェス2014』は、【俳優・モデル部門】が10 歳~19 歳までの男女、【歌うま・声優部門】が12 歳~25 歳までの男女、【バラエティー・タレント・キャスター部門】 でも16 歳~30 歳までの男女が応募資格だぞ」
「なんだ、そこまで知ってるって、私が云う前からその気なんじゃないですかあ」
「いや、だからワシには応募資格がないんだ」
「あなたも普通の人とおんなじなんですね」
「なんだと!?」
「応募資格なんてキマリに縛られるなんて、な~んだ、普通の人なんですね」
「いや、そういう訳ではない」
「だって、応募資格がないって….」
「ヒトの話は最後まで聞け」
「じゃ、なんですか?どういう訳なんですか?」
「『キミはまだ、キミの可能性にきづいていない。』っていうのが、このフェスのキャッチコピーだ」
「知ってますよ、そんなことくらい」
「甘いなあ、相変らず君は。いいか、このキャッチコピーには、もう一つの応募資格が隠れてるんだ」
「意味が分りません」
「自分の可能性にきづいていない奴が対象、ということではないか」
「それが?」
「ワシはワシの可能性にきづいておる」
「随分な自信ですね。60歳の老人に今更、何の可能性があるんですか?」
「それに、もう一つ気になることがある。各部門共通の条件として『特定のプロダクションやレコード会社と契約のない方』っていう項目があるんだ」
「アナタ、調べ上げてますね、でも、アナタ、どこのプロダクションやレコード会社とも契約していないでしょ」
「確かに、石原プロは、石原『プロモーション』であって『プロダクション』ではないからなあ」
「ぶふっ。『プロダクション』ではなく『プロモーション』であるにせよ、石原プロと契約してないでしょ」
「所謂、文書での契約はな」
「では、口頭では契約してるって云うのですか?」
「ノーコメントだ。事務所を通してくれ」
「どこの事務所ですか?」
「兎に角、ノーコメントだ。事務所を通してくれ」
「要するに、『アミューズオーディションフェス2014』に応募しても採用される自信がないんでしょ」
「ふ、ふ、ふざけるな。ワシを誰だと思っておる!」
「エヴァンジェリストさん、でしょ」
「自信ならある。だが、アミューズにワシは要らんだろう」
「石原プロだって要らないと思いますがね」
「アミューズは、東証一部上場の優良企業だし、福山も桑田も三宅もいるじゃあないか。寺脇も健(タケル)もいる」
「福山雅治、サザンオールスターズの桑田佳祐、三宅裕司、寺脇康文、佐藤健、ですね」
「然るに、石原プロはと云うと…..」
「分ってますよ、石原プロの窮状は」
「だったら…」
「でも、アナタだって困ってるんでしょ。生活苦なんでしょ」
「ああ、苦しい。だが待て、間もなく7/17が来る」
「7/17?」
「ああ、7/17だ」
「そうか、石原裕次郎の命日ですね」
「ノーコメントだ。事務所を通してくれ」
「アナタっていう人は」
「ところで、アミューズには『鹿』部門はないのか?」
「多分、ないと思います」
「『鹿』部門があれば、迷わず、アイツに応募させたのだが….」

勿論、アオニヨシ君のことだ(参照:アオニヨシ君、登場!....老人をあしらう。………サッカー日本代表が敗退した日。)。こうやっていつも誤摩化されるのだ。









2014年7月5日土曜日

【鹿男】カノジョと元カノとの間[中編]





「鶏は三歩歩くと忘れる、というが、鹿が忘れるのは、一歩のようだ。それは、長崎でのことであった」

「人間鹿」ことアオニヨシ君とエヴァンジェリスト氏との間であった出来事を聞くことにした。

――――――――――

「君、カノジョいるのか?」

長崎空港から長崎市内行の空港リムジンバスが動き出すか出さないかのうちに、エヴァンジェリスト氏はいきなりアオニヨシ君に訊いた。

その年(2013年)の新入社員のアオニヨシ君との出張は今回が初めてであるのに、仕事の話もせず(今回の訪問先情報を教えるでもなく)、いきなり個人情報に係る質問をぶつけるのであった。

「長崎に、ワシはカノジョと来たことがある。まあ、カノジョというか、その時はもう女房になっていたがな。つまり、長崎は、ワシの新婚旅行の地なんだ。どうして、長崎を新婚旅行先に選んだかというと…..」

そうか、エヴァンジェリスト氏は、質問するようにみせかけ、自分のことを語りたかったのか……

「いますよ」

そんなエヴァンジェリスト氏のもくろみをぶちこわすように、アオニヨシ君が答えた。

「え?えっ、え?」
「いますよ。カノジョ」
「で、どうして、ワシが長崎を…..」
「聞いてますか?いますよ、カノジョ」
「あ、ああ、聞いてるとも。いるんだな、君にはカノジョが」
「ええ、いますよ。カノジョ」
「カノジョとはどうやって出会ったんだ?ワシが女房と出会ったのは…」
「ウチの近くのバーです」
「バー?」
「ウチの近くのバーに入り、カウンターの端に座ったんです」
「君は一人でバーに入るのか?」
「いけませんか?」
「いや、いけなくはないが」
「そして、ふと見ると、カウンターのもう一方の端に、奇麗な女性が独り、なんだか淋しげにソルティドッグを飲んでいたんです」
「そいつがカノジョだな」
「いえ、その時はまだカノジョではありません。それに、『そいつ』とは失礼ではないですか」
「いや、失敬」
「まあ、その後に、カノジョになるんですがね。その晩のうちに、ムフフ」
「おぬしもスケベじゃのお」
「僕は、バーテンダーに頼みました、『あちらの女性に、アプリコットフィズを』とね」
「おおお!そんな、そんなキザなことをしたのか、君が」
「キザですか?」
「キザもキザ、キザの極みだな。しかし、君には似合わん」
「エヴァンジェリストさんは、しないんですか?」
「しない…まあ、そうして君はその女性とお近づきになり、その晩のうちにコトに及んだ、ということなんだな」
「まあ、お察しの通りです」
「手が早いのお」
「ま、いいじゃないですかッ」
「この話、本当か?何だか嘘くさいなあ。居酒屋で飲んだくれて、酔いつぶれていた女を『連れ込んだ』だけのことではないのか?」
「本当の話ですよ」
「何だか胡散臭いなあ。『あちらの女性に、アプリコットフィズを』なんて、そんな映画の1シーンのようなことがあるのか」
「ま、いいじゃないですかッ」
「その『ま、いいじゃないですかッ』はやめろ。まるで、ヒトサシユビKではないか」
「ま、いいじゃないですかッ」

――――――――――

そうして、二人は、いつの間にか浜町アーケードを抜け、中央橋を渡り、築町界隈へと歩を進めていた、と云う。




そこで、『事件』起きたのだ。


(続く)








2014年7月3日木曜日

「YOUは何しに米子鬼太郎空港に?」



「米子鬼太郎空港に『無事』到着です」

米子の特派員から報告が入った。エヴァンジェリスト氏の言動が心配なので(参照:「僕は自殺しない」……..再雇用者の呟き。)、米子出身の特派員に羽田空港から尾行させたのだ。

残念ながら、いやエヴァンジェリスト氏の『意向』に反して、羽田空港14:15発-米子鬼太郎空港15:35着のANA385便は、当り前のことではあるが、無事に到着したようだ。エヴァンジェリスト氏の窮状は分るが、飛行機に乗って、妙なことが起きてもらっては困る。

――――――――――

「ところで、エヴァンジェリスト氏は何をしに米子に来たのですか?」

そうだ。特派員には、尾行の理由を教えていなかったのだ。

「『YOU』の関係ですか?」

ああ、そうか、『YOU』絡みと勘違いしているのか。バナナマンがMCのテレビ東京のバラエティ番組「YOUは何しに日本へ?」のことだ。

日本に来た「YOU」、つまり外国人に「何をしに日本に来たのか?」という成田空港等でインタビューをすることをメイン企画とする番組である。

先日の(2014年6月23日の)放映で、新企画「日本全国・国際空港へ行ってきなYOU」が始った。

担当ディレクターに、地方空港で「YOU」に突撃インタビューをさせ、「密着取材」が出来るまでは東京に戻って来てはいけない、という企画である。

最初の空港は、キタグニカラキタ・カミ氏(旧名:キタグニカラキタ・スパイ、参照:スパイが神になった日)の地元、旭川空港で、2晩目の空港が米子鬼太郎空港であった。

――――――――――

「旭川空港はまだしも、米子鬼太郎空港はないだろう」

番組を見ながら、エヴァンジェリスト氏が呟いた。

「米子鬼太郎空港にYOUは殆どいないぞ」

さすが、元「プロの旅人」である(エヴァンジェリスト氏は、諸般の事情で、この(2014年の)4月から出張三昧の部署から、基本的には出張の内部署に異動となったのだ)。

旭川空港では、密着取材の「YOU」は簡単に見つかったが、米子鬼太郎空港ではなかなか見つからまかった。

国際線は、韓国(ソウル:金浦)便が1日3便あるだけで、しかも担当ディレクターに大問題が発生した。韓国人と日本人との区別がつかないのだ。

で、そうこうしている内に人がいなくなり、国内線で到着した「YOU」に密着取材をしたが、断られ、ついに空港外に「YOU」を探しに出てしまう。




「しかし、あれはないぞお」

エヴァンジェリスト氏はオカンムリだ。

空港外に「YOU」を探すのは、企画に反した行動であるが、それだけでオカンムリになったのではなかった。

「鳥取(市)まで行ってはいかんだろう」

それはそうだ。鳥取市には鳥取空港があるのだ。鳥取県には、生意気にも、いや失礼…..えへん、鳥取県には空港が2つあるのだ。県西部の米子には米子鬼太郎空港、県東部の鳥取市には鳥取空港があるのだ。

空港外で「YOU」を探すにしても、空港が米子鬼太郎空港なら、米子で探すべき、ということなのだ。

結局、鳥取市でロシア人女性の「YOU」を見つけ、密着取材に成功はしたのであったが。

――――――――――

「エヴァンジェリスト氏は何をしに米子に来たのですか?」

特派員が繰返し訊いてきた。

「飛行機では、エヴァンジェリスト氏の一つ空いた隣の席がYOUでしたので、密着取材を申し込むのかと思って注意していましたが、話しかけもしませんでした。エヴァンジェリスト氏は、『YOU』の関係で米子入りしたのではないですか?」

「いや、知らない」

本当に知らなかった。水木プロと石原プロの合併の件かもしれないが………(参照:合併!?水木プロと石原プロ)

「エヴァンジェリスト氏に、『YOU』で密着取材して欲しいです」

いつのまにか、カンサイデモナイ・トーカイデモナイ・チュラデスさん(「うぬぼれ営業」夫人、参照:ひと味違う私の指…….沖縄の光景(後編)、【呉市音戸町波多見】どちらかといえばキリスト教。どちらかとえいば平家。(中編)、【疑惑の旅】八坂神社は縁結びの神(シーン5))が、私と特派員との会話(電話)聞いておられ、口を挟んで来られた。

止めて欲しい。カンサイデモナイ・トーカイデモナイ・チュラデスさんは、ご自身の思いを素直に云われただけであることは分っているが、そんな話がエヴァンジェリスト氏の耳にはいると、その気になってしまうのだ。

落ち込むエヴァンジェリスト氏も困るが、思い上がるエヴァンジェリスト氏はもっと困るのだ。





2014年7月2日水曜日

【鹿男】カノジョと元カノとの間[前編]



「鹿は、何歩、歩くと忘れると思うか?」

エヴァンジェリスト氏が、いきなり訊いて来た。

しかし、質問の意味が分らない。

先日の名古屋駅のホームでの出来事があったばかりだから、アオニヨシ君のことで何か云いたいのであろうことは容易に想像できた(参照:アオニヨシ君、登場!....老人をあしらう。………サッカー日本代表が敗退した日。)。

しかし、「何歩、歩くと忘れるか」って、目的語がなく、そんな質問には何とも答えようがない。

それに、人間をつかまえて(人間に対して)鹿呼ばわりするなんて、失礼にも程がある。アオニヨシ君は確かに鹿に似てはいるが、人間なのだ(多分)。

「人を鹿呼ばわりするなんて、失礼にも程がある、とでも思ったか?」

ギョッ。失礼な人だが、油断のならない人でもある。動揺を悟られぬよう、ゆっくりと答えた。

「アオニヨシ君のことを鹿だなんて、思ってはいませんよ」

…….と、エヴァンジェリスト氏の顔は、満面、笑みで被われた。

「フフフ。語るに落ちる、とはこのことだな。誰が、アオニヨシのことだと云った?」

しまった…….しかし、もう遅かった。

「まあ、よかろう。あの時、君もアオニヨシのことを鹿と見たことは分っているのだからな」

ああ、確かに、アオニヨシ君は、鹿に似ている、というよりも、人間に似た鹿、といった方が妥当かもしれない程であるのだ。




「…..そこで、訊く。鹿は、何歩、歩くと忘れるのか?」

万城目学の小説で、それを原作としたドラマもあった「鹿男あおによし」そのままに、アオニヨシ君は鹿男と云っても過言ではあるまい。

「鶏は三歩歩くと忘れる、というが、鹿が忘れるのは、一歩のようだ。それは、長崎でのことであった」

この際、アオニヨシ君のことを「鹿」として、アオニヨシ君とエヴァンジェリスト氏との間であった出来事を聞くしかあるまい。


(続く)







「僕は自殺しない」……..再雇用者の呟き。



「僕は自殺しない」

いきなりの、いきなりの言葉であった。

エヴァンジェリスト氏がそう云う意味を私は知っていた。

エヴァンジェリスト氏は、60歳を前にして人生で初めて「家」を購入した(中古マンションである)。80歳までの住宅ローンである。

それまでの賃貸マンションの賃料よりもローンの支払の方が安く済むのである。

60歳になり、再雇用になると、現実は想定よりももっと厳しかった。給料は半減以下である。医療費に困るのは勿論、食費にも困るようになった(なっている)。

若い人はよく理解しておいた方がいい。人によって、また、時代によって違いはあるとは思うが、今(2014年)、60歳から-65歳までの間が最も悲惨(お金に困る)かもしれない。

再雇用で働き、社会保険にも入ると(そうなる程の収入がないと困る)、年金は受給できない(1954年生れのエヴァンジェリスト氏の場合、厚生年金部分は61歳から受給可能であるが)。

しかし、再雇用者の給料は、エヴァンジェリスト氏のように、一般に(多分)、かなり悪い。

一方、65歳になってしまうと、年金を満額受給でき、そこに働くと(社会保険に入る程の収入にはならない程の給料で)、年金にプラス労働収入が入るのだ。多分、その方が、60歳から-65歳までの間での再雇用者としての収入よりもよくなるのだ。

再雇用になり、いきなり生活苦に陥ったエヴァンジェリスト氏は、死ねば住宅ローンがなくなるので、今、死を望んでいるらしい。残された夫人には、住宅ローンはなくなり、更に、氏の年金の7割程度の遺族年金が入るはずだ。

そう考えると、自分が死んだ方が妻の為になる、と妻思いのエヴァンジェリスト氏は思うのだ。

それも生命保険が有効な8月までに死ぬことが一番だ、と思うのだ。

更に、出張中の飛行機事故死がいい、と思うのだ。不謹慎だと云ってはならない。エヴァンジェリスト氏は真剣なのだ。

8月までに出張中に飛行機事故死すると、生命保険の支払、航空会社からの慰謝料が妻に入る。

繰返すが、エヴァンジェリスト氏のことを不謹慎だと云ってはならない。エヴァンジェリスト氏は、本当に真剣なのだ。

今(8月までに)、死ぬのが一番だ、と思うのだ。

しかし、自殺では住宅ローンは免除されなくなる。…….だから、

「僕は自殺しない」

なのだ。

私は、エヴァンジェリスト氏にどう声をかけていいものか、と思い、立ちすくんでいた…..と、

「まあな、あの手もあるな」
「あの手?」
「DVDを出すんだ。それで一儲けだ」
「DVD?」
「ああ、水着のな」
「水着のDVD?誰のですか?」
「誰の、って、決ってるだろ」
「ええ、まさか!?」
「まさか、ではない。もちのろん、ワシのだ」
「いや、それはちょっと……」
「何を云う。元日本テレビのアナウンサーの脊山麻理子だって、いい歳をして『脊山麻理子34 ~永遠の天然少女~』というビキニを着たDVDを出し、馬鹿売れだそうではないか」
「いえ、いい歳と云っても、脊山麻理子はまだ….」
「心配するな。ワシは、ビキニ姿にはならん」

ああ、エヴァンジェリスト氏の窮状に同情し、損をした。

......しかし、私は知らなかった。呆れてため息をつく私に背を向けたエヴァンジェリスト氏が、口を真一文字にし、目を瞑っていたことを。