2017年6月12日月曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その7)




「鹿です!そう、紛うことなく、それは鹿でした」

六本木の特派員からエヴァンジェリスト氏への報告だ。

「驚くじゃあ、あーりませんか。鹿が夜の芋洗坂にいたんですよ」

かなり興奮している。

「シカも、ただの鹿ではないのです。写真をお送りします」





おお、これは!

「そう、人間鹿です。噂に聞いてはいましたが、見るのは初めてです。ついに六本木に出現です。ハリネズミなら驚きませんが、鹿なのです。それも人間鹿なのです」

何故、アイツが六本木に、アオニヨシはどうして芋洗坂にいるのだ?

アイツは今、会社で仕事に追われているはずだ。芋洗坂に行っている暇はなかったのではないか。

「多分、『遊び』に来たのです」

それはそうであろう。仕事ではないはずだ。今、アイツは六本木に顧客を持ってはいないのだ。

「いえ、『遊び』と言っても、アッチの方の『遊び』です」

アッチの方の『遊び』?

『YOU』系です。『YOU』系の『遊び』です」

『YOU』系って…..?

『YOU』ですよ。『YOU は何しに日本へ?』『YOU』です」

そうか、外国人のことか。

そうなのか、人間鹿は、六本木にいる外国人にWhere are you from?』と話しかけているのか。テレビ東京の番組の真似っこ遊びをしているのか!

「あ~。アナタは何もわかっていらっしゃらない」

特派員は、クネクネと首を振った。「呆れたよ」という素ぶりであった。



(続く)





【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その6)



かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

「キーッ」

六本木の夜、ロアビル辺りの上空に、金属音のようなものを聞いたCAのシゲ美とOLのトシ江は、白人女性に声を掛ける「男」を見かけた。

「Hi!」

しかし、「男」からは、肉食系の二人には、直ぐに分る野生の臭いがした

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」
「違うわね」

二人は呟きあった。

「Where are you from?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではいことは、『野生』に敏感なシゲ美とトシ江には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「ね、君たち、一緒に、焼肉食いに行かない?」

とダサい男にナンパされ、振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

CAのシゲ美とOLのトシ江は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかったであった。





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「キーッ」

六本木の夜、ミッドタウン前の路地を入ってすぐ辺りの静かな場所の上空に金属音のようなものが響き渡った。

外国人ばかりで店員も英語で注文を取りに来るサパークラブを出て来たシゲ代とトシ美は、上空を見上げた。

週に二、三度は六本木に来ているが、初めて耳にする音であった。

上空を見上げる二人の横を一つの影が通り過ぎた。

「え?......何、今の?」

シゲ代とトシ美は、互いに相手に同じ質問を投げかけた。

野生の臭いであった。肉食系の二人には、直ぐに分る臭いであった。

「Hi!」

数メートル先に、白人女性に声を掛ける男がいた。

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」

トシ美が呟いた。

「違うわね」

シゲ代も呟き返した。

「Why did you come to Japan?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではなかったのだ。

「あら、バナナマンの番組の取材じゃない?」

近くにいたカップルの女性が、カレシにそう云った。

他の人たちには人間に見えるかもしれなかったが、『野生』に敏感なシゲ代とトシ美には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「君たち、タクシー代出すから、家ついて行っていいかな?」

ナンパだ。新手のナンパだ。向こうも男二人だ。

どこかの番組の真似でふざけている。しかも、二人とも老人であった。

こんな奴らには興味はない。

気になる。気になるのは『野生』の方であった。

シゲ代とトシ美は、肩に手を回している老人二人を振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

女医のシゲ代とOLのトシ美は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかった。




(続く)




2017年6月11日日曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その5)




かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

『野獣会』復活を目論んでいるのは、『原宿の凶器』と呼ばれたモノの持ち主であるビエール・トンミー氏ではないかと目された。

マダム・トンミーも、普段は、知的、理性的な夫が、実は『ケダモノ』でもあったことを思い出し、疑念を抱いた。

「この人、『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

しかし、それは無用な心配であった。

妻の疑念も知らず惰眠を貪っていたビエール・トンミー氏の『原宿の凶器』は既に、今や『○○の小器』となってチンマリしていたのである。





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「キーッ」

六本木の夜、ロアビル辺りの上空に、金属音のようなものが響き渡った。

「六本木横丁」で焼肉を食べ終えたシゲ美とトシ江は、上空を見上げた。

週に二、三度は六本木に来ているが、初めて耳にする音であった。

上空を見上げる二人の横を一つの影が通り過ぎた。

「え?......何、今の?」

シゲ美とトシ江は、互いに相手に同じ質問を投げかけた。

野生の臭いであった。肉食系の二人には、直ぐに分る臭いであった。

「Hi!」

数メートル先に、白人女性に声を掛ける男がいた。

いや、それは「男」であっただろうか?

「違う…..」

トシ江が呟いた。

「違うわね」

シゲ美も呟き返した。

「Where are you from?」

と続けて白人女性の声を掛ける「男」は、人間ではなかったのだ。

他の人たちには人間に見えるかもしれなかったが、『野生』に敏感なシゲ美とトシ江には分るのであった。

….と、二人は、それぞれ肩を叩かれた。

「ね、君たち、一緒に、焼肉食いに行かない?」

ナンパだ。いつものことだ。向こうも男二人だ。

しかし、ダサい誘い方だ。しかも、二人ともブサメンであった。

こんな奴らには興味はない。

気になる。気になるのは『野生』の方であった。

シゲ美とトシ江は、肩に手を回している男二人を振り切り、『野生』の方を見た。

しかし、そこに「男」はもういなかった。

なんだったのだろう?

CAのシゲ美とOLのトシ江は、その時まだ、『野獣会』の復活の噂を知らなかった。





(続く)








2017年6月10日土曜日

【緊急特報】山手線に万歳男



新宿駅で山手線を降りたトシ子は、SNSで呟いた。

「さっき、電車の中に変なお爺ちゃんがいた…….隣で臭かった」

2017年6月9日、夕方6時過ぎである。

山手線原宿駅ホームで、一人の老紳士が「ふーっ」と息をついていた。

「あんな混んだ電車は久しぶりだった」

30歳を前にしたOLのトシ子は、SNSで更に呟いた。

「どうして電車の中で万歳してたんだろ、あの爺さん?」

一見、じっくりと自分の立場を考えて仕事をする、物静かで理路整然と話すクレバーな会社役員にも見える老紳士は、原宿駅ホームで人波に流されていた。

「痴漢に間違えられるのではないか、と心配だった」

顔を顰めながら、トシ子は呟きを続けた。

「万歳して、両手を上げるから、アタシの顔の前に爺さんの脇があって、堪らなかった。あれって、ワキガって云うの?」

ホームを流されるように歩いていると、若いサラリーマンに肩をぶつけられ、老紳士はよろけた。

「痴漢に間違えられたら嫌だから、取り敢えず、両手を上げた….」




ワキガを思い出し、顔を顰めながらも、どこか喜悦の表情を浮かべながら、トシ子は呟いた。

「そうだ、クサヤみたいだった。臭いけど、食べたいクサヤみたいだった、ふふ」

既に、現役を引退し、仕事の現場を離れて久しい老紳士は、東京オリンピックを思い出していた。

「両手を上げていると、ゴールするアベベみたいだった」

2020年に開催される東京オリンピックのポスターの横を歩きながら、トシ子は呟きを続けた。

「あの爺さん、変態だわ。体のアソコをアタシの腰に引っ付けて来たのよ」

老紳士は、勤めていた会社の独身寮の同窓会に向っていた。

「満員電車で、隣にオープンカレッジの美人講師に似たOLがいて、困ってしまった。アソコが『反応』してしまった」

大学で西洋美術史の講師をしている姉を持つトシ子は、最後の呟きを書いた。

「あの爺さん、スゴかったあああ。最近、仕事が忙しくて余り相手にしてくれないカレよりも、ふふ」

会社の元同僚たちからは、仕事ができ、マーケティング部にいた会社のマドンナをものにした(娶った)エリートと思われている老紳士は、電車内での『興奮』を鎮めようと努力していた。

「同窓会では、自分が実は、『変態老人』であることは隠さないとな」

そう、老紳士こと、「ニヒルに見せかけて、実は仮面をかぶったヘンタイ男」は、ビエール・トンミー氏なのであった。





2017年6月8日木曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その4)



かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂があった。

その噂を耳にしたマダム・トンミーは、普段は、知的、理性的な夫が、実は『ケダモノ』でもあったことを思い出し、疑念を抱いた。

「この人、『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

と、妻が無用な心配をしていることも知らず、ビエール・トンミー氏は、惰眠を貪っていたのであった。




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美人講師は、自らの眼を疑った。

眼の前に、『ケダモノ』がいたのだ。

オープンカレッジの教室に何故、『ケダモノ』がいるのだ。

信じ難くて、眼を瞬かせた。

すると、『ケダモノ』は消え、いつものエロ爺がそこにはいた。教室最前列、中央の席に。

舐めるような視線でこちらを見ている。気持ち悪いが、もっと舐めろ、と云う、もう一人の自分の声が聞こえる。

キンコンカンコーン!

そんなことに囚われている場合ではない。講義だ。講義をしなくては。

今日のテーマは、『フォヴイスム』だ。『野獣派』だ。

「『フォヴイスム』が、『野獣派』とされるのは、批評家ルイ・ヴォークセルが…..」

そうか、『野獣派』という言葉から、『ケダモノ』の幻想を見たのだろう。

『野獣派』は、決して『ケダモノ』を描くというものではないが、自分の中にもある、抑え切れない『野生』が、『野獣』という言葉から『ケダモノ』を連想させたのかもしれない

そして、気持ち悪いと思いながらも、自分と同じ『野生』の臭いの持ち主であるエロ爺の姿を『ケダモノ』と見間違えてしまったであろうか。

「先生、質問です。どうかされたのですか?」

しまった!沈黙していたようだ。爺さんに質問というか、声を掛けられてしまった。

マズイ。また、自分の世界に入りかけていた。

「アンリ・マティスは......」

講義を続けた。

しかし、爺さんの臭いがもろに浴びせかかって来る。

「『フォヴイスム』の画家たちを指導したギュスターヴ・モローは、….」

頑張って講義を続けた。

エロ爺の臭いは、『野生』のものだけでなく、老人臭混じりなので、尚更、臭く、饐えたものだ。

そんなもの嗅ぎたくはない。嗅ぎたくはないが、その臭いを自宅に持ち帰ってしまうのだ。

その日も、エロ爺の臭いは、美人講師の意思とは関係なく、彼女の自宅マンションまで付いてきた。

『野獣派』の講義をどう終えたか、記憶にない。

講義の間、幾度も、爺さんが『ケダモノ』に見えた。爺さんの『野生』の臭いが浴びせかかって来た。

疲れた。いつも以上に疲れた。

帰宅し、着ていた服を脱ぎ、クローゼットにかけようとすると、爺さんの臭いが鼻をつく。服に染み付いてしまっているのだ。

「チクショー」

と思いながらも、ハンガーに掛けた服に鼻を近づけてしまう。



爺さんは、言葉は悪いが、本当に『チクショー』だ。そうだ、『野獣』だ。『ケダモノ』だ。

「…若い方たちはご存じないかもしれませんが、かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、復活されようとしている、という噂が……」

???…..ニュースだ。帰宅して直ぐつけたテレビから聞こえて来たのであった。

『野獣会』なんて聞いたことはない。しかし、気になった。『野獣会』が何であるのか知らないが、気になった。

『ケダモノ』に化した爺さんの姿が眼前に浮かんで来た。

「あの爺さん、『野獣会』かしら….六本木の夜で『ケダモノ』になるのかしら」


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「あの爺さん、『野獣会』かしら….六本木の夜で『ケダモノ』になるのかしら」

と自宅で呟く美人講師を見た。

美人講師の自宅がどこにあるのか知らない。勿論、行ったこともない。

しかし、美人講師が、自分のことが気になって仕方がない様子を見ている。

「夢だ」

ビエール・トンミー氏は、それが夢であることを自覚していた。目覚めてはいなかったが、眠りの中で、それが夢であることを理解していた。

美人講師が自分に囚われていることに、それが夢と分っていても、ビエール・トンミー氏は、『興奮』した。

目覚めてはいないのに、自分の体に『異変』が生じていることが分っていた。

しかし、その『異変』を妻が見ており、頬を薄桃色に染めて、こうつぶやいたことは知らなかった。

「この人、やっぱり『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」



(続く)








2017年6月7日水曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その3)



かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂に関する質問に、ビエール・トンミーが答えた。

「ワシは元々、『野獣会』のメンバーになる存在ではなかった。ただの『野獣』ではない。『インテリ野獣』であったのだ。理性と野生が共存した稀有な存在であるのだ」

変態老人の言い訳は聞き苦しいが、どうやら、ビエール・トンミー氏は『野獣会』復活とは無縁のようだ。




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「フォーヴィスム.......」

マダム・トンミーは、夫のうなされるような寝言を耳にした。

「フォーヴィスムって、なんだったかしら?」

『お昼ご飯よ』、と呼んでも起きてこない夫を起こしに来たのだ。

夫は、毎夜、明け方まで、歴史や世界情勢、そして、しばらく前からハマっている西洋美術史に関する本を読んだり、それらに関するビデオを見て、勉強しているのだ。

仕事を完全リタイアした還暦過ぎの老人なのに偉いと思う。

10歳も年上の会社の先輩だった夫と結婚したのも、そんな夫のインテリゲンチャなところに魅かれたのだ。

勿論、『原宿のアラン・ドロン』とも云われた美貌にも魅かれたのではあった。

いや、最初は、今で云うイケメンぶりに参っただけであった。

しかし、付合ってみると、その博識、見識に驚かされた。

商学部だから、マーケティングや簿記に詳しく、財務分析というものにも通じているのは、まあ当然としても、フランス語も達者あったのは意外であった。

今でも、フレンチ・レストランに行き、食事を摂ろうとすると、「ボナペチ」と云う。

カトリック文学にも関心があったようで、遠藤周作の「沈黙」を読んでいた。

モーリアックだとか、グレアム・グリーン、ジュリアン・グリーン、ジョルジュ・ベルナノスなんて、聞いたことのない作家の名前を挙げ、『原罪』がどうだこうだ、と熱っぽく語っていたものだ。

.......と、寝ている夫が、寝たまま右手を上げる仕草をして、

「先生....質問.....」

と、か細い声をだした。

そうか、西洋美術史のオープンカレッジの講義の夢をみているのだ。

『フォービスム』も、何だかは分らないが、西洋美術史関係の言葉だろう。

夢に見るほど、西洋美術史に入れあげているのだ。

「アンリ・マティス....」

夫の美貌と知性に魅かれたが、結婚してみると、また別の一面も知ることとなった。

正確に云うと、結婚してみて、というよりも、結婚前に、より『深~い』お付合いをするようになって知ったのだ。

知性と理性の塊のように思っていた夫は、実は『野獣』でもあったのだ。

「ふふ」

思い出し笑いをしてしまった。

最初は戸惑ったのであった。夫がこんなに猛々しいとは思っていなかった。

『初めて』の時、夫に思わず云った。

「あなた、『ケダモノ』ねえ」





不満を云ったのではない。

普段は、知的、理性的だが、ソノ時、『ケダモノ』に豹変する夫が、むしろ嬉しかった。

夫が、かつて『ケダモノ』であったことを思い出し、ふと思った。

「ウチの人、ひょっとしてメンバーかしら?」

最近、噂を耳にしたのだ。

六本木にかつてあった『野獣会』というグループが、何だか60年ぶりに復活するという噂だ。

『野獣会』がどんな集りかは知らないが、『野獣』、『ケダモノ』のような者たちのグループなのであろう。

まさか、とは思うが、夫もその『野獣会』のメンバーなのではないか、という疑念が、頭を過ぎったのだ。

しかし、マダム・トンミーは直ぐに、思い直した。

夫は今はもう、『ケダモノ』ではない。

むしろ今も『ケダモノ』でいて欲しいくらいだが、夫も老いた。

その時、夫か四度目の寝言を吐いた。

「ギュスターヴ・モロー.....」

モローって、聞いたことのあるような名前だが、はっきりは分らない。画家だろうか?

「ギュスターヴ・モロー.....」

と云いながら、夫は寝たまま体を少し横向け、体のある部分を露わにした。

夫が、少し、少しだけ『ケダモノ』を取り戻しているようにも見えた。

「あら.....!」

夫人は、頬を薄桃色に染めた。

「この人、やっぱり『野獣会』なのかしら?外で『ケダモノ』になってるのかしら?」

と、妻が無用な心配をしていることも知らず、ビエール・トンミー氏は、まだ惰眠を貪っていた。



(続く)








2017年6月6日火曜日

【野獣会、再び?】六本木に『ケダモノ』、現る!(その2)



「君なのか、『野獣会』復活を目論んでいるのは?君は、かつて『原宿の凶器』と云われたモノの持ち主だからな。どうだ、答えよ、ビエール・トンミー氏よ」

かつて六本木にあったとされる『野獣会』が、およそ60年の時を経て、復活されようとしている、という噂を耳にし、ビエール・トンミー氏に問うたのであった。




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「おお!『野獣会』が復活か....いや、すまん。正直に云おう。『野獣会』のことは初めて知った」

ビエール・トンミー氏にしては、珍しく正直だ。

「まあ、『野獣会』と聞いて、先ずワシのことが君たちの頭に浮かぶのも無理はない。若い頃のワシは、まさに『野獣』そのものであったからな、ハハハハハ」

やはり、うぬぼれ屋のビエール・トンミー氏だ。

「しかし.....」

と、ビエール・トンミー氏は、年相応の老人らしく、肩を落とし、ため息混じりに言葉を吐いた。

「しかし....だ。ワシも老いた。かつて『原宿の凶器』と呼ばれたアレも、今や『○○の小器』となってチンマリしておる




そんなことは、とうに承知だ。

「アソコに白いものも増えた.....」

元カノのアグネスや、オープンカレッジの美人講師と怪しい関係を持ちそうになる夢を見る、というよりも、そんな妄想ばかりしていることは、バレているのだ。

「妻が最近、かなり大きめのウインナー・ソーセージを食事に出すことが多いのが気になる。どういう意味なのだ?」

夢にせよ、妄想にせよ、元カノや美人講師と怪しい関係を持ちそうになる、というところで止まるのが、情けない。

「いやいや、老いたから、ということではなく、ワシは元々、『野獣会』のメンバーになる存在ではないのだ」

気を取り直したようだ。強がりだ。懲りない老人である。

「ただの『野獣』ではなかったのだ。『インテリ野獣』であったのだ。理性と野生が共存した稀有な存在であったのだ」




変態老人の言い訳は聞き苦しい。

どうやら、ビエール・トンミー氏は『野獣会』復活とは無縁のようだ。

では、『野獣会』復活にかんでいるのは、誰なのか?



(続く)