2017年12月7日木曜日

「Windowsですか?」(その15)[流涎のビエール・トンミー氏]



「Windowsって、使い辛くないですかあ?」

という、更に想定外の質問というか、不満を、乗客のビエール・トンミー氏にぶつけて来たJANAのスチュワーデス(CA)は更に、今度は、具体的な質問、いや、不満をぶつけて来た。

「Windowsって、どうして、ファイルやフォルダーのアイコンを変えられないんですか?」

スチュワーデス(CA)は、具体的な質問、いや、不満をぶつけて来た。

「いや、変えられますよ」
ビエール・トンミー氏は、冷静になろうと、唾を飲み込んでから、答えた。

「どうするんです?」
「あ、それは、マウスをデスクトップ上で右クリックして、『個人設定(R)』を選択して…..」
「ああ、そんなことは知ってます!」
「え!?」
「面倒臭いけど、そうすればできることは知ってますう
「じゃあ、いいのでは…….」

ビエール・トンミー氏は、タジタジになっていた。







「マウスをデスクトップ上で右クリックして、『個人設定(R)』を選択して…..」
「ん、もう!そんな面倒臭いことをして、でも変えると、どのアイコンもみんな変っちゃうじゃないですか!」
「いや、『コンピューター(M)』アイコンと『ゴミ箱(R)』アイコンと『ユーザーのファイル(U)』アイコンとは別々に設定….」
「ん、もう、もう!私は、エクセルのファイルのアイコンだけ変えたいんですう

スチュワーデス(CA)は、『ですう』と口を尖らせた。

ビエール・トンミー氏は、『ですう』と尖った口を可愛いいと思った。

だが、気を取り直して、

えへん!それは可能です!」

と、生やしていないカイゼル髭を撫でるような仕草をして答えた。


「ああ、それはですなあ。先ず、[マイドキュメント]を開き、[ツール]メニュー→[フォルダオプション]をクリックし、次に、[フォルダ オプション]ダイアログボックスが表示されたら、[ファイルの種類]タブをクリックし、[登録されているファイルの種類]ボックスから変更するファイルの種類を選択するんです」

自分でも感心するくらい、スラスラと解説できている。

「えへん!それから、[詳細設定]ボタンをクリックし、[ファイルの種類の編集]ダイアログボックスが表示されたら、[アイコンの変更]ボタンをクリックして…..」

と、ビエール・トンミー氏が悦に入った説明をしていると、

「ドン!」

と飛行機の床が鳴った。

ビエール・トンミー氏は、思わず、床の方を見た。どうやら、スチュワーデス(CA)が片足を上げ、思い切り、それを床に落としたようであった。

「ん、もう、もう、もう!いい加減にして下さい!そんなこと知ってますう!でも、誰がそんな面倒臭いことをするんですか!」
「いや、まあ…..」

ビエール・トンミー氏は、自身の甘さを思い知らされた。


(続く)



2017年12月6日水曜日

「Windowsですか?」(その14)[流涎のビエール・トンミー氏]



「いいですかあ、Windowsって?」

と、想定外の言葉を掛けて来たJANAのスチュワーデス(CA)は、

「iBookですか?」

と、エヴァンジェリスト氏に声を掛けたスチュワーデス(CA)であった。少なくともビエール・トンミー氏にはそう見えた。


スチュワーデス(CA)は、同じ制服を見ているので、別のスチュワーデス(CA)を見間違えているのだろうか?

しかし、ビエール・トンミー氏の疑問に被せるように、スチュワーデス(CA)が質問をぶつけて来た。

「Windowsって、使い辛くないですかあ?」






「Windowsって、使い辛くないですかあ?」

という、更に想定外の質問というか、不満をぶつけて来たスチュワーデス(CA)に、ビエール・トンミー氏は、

「はっ!」

と云う言葉も失った。

「Windowsって、どうして、ファイルやフォルダーのアイコンを変えられないんですか?」

スチュワーデス(CA)は、具体的な質問、いや、不満をぶつけて来た。

「いや、変えられますよ」

ビエール・トンミー氏は、冷静になろうと、唾を飲み込んでから、答えた。

「どうするんです?」
「あ、それは、マウスをデスクトップ上で右クリックして、『個人設定(R)』を選択して…..」
「ああ、そんなことは知ってます!」
「え!?」
「面倒臭いけど、そうすればできることは知ってますう
「じゃあ、いいのでは…….」

ビエール・トンミー氏は、タジタジになっていた。




(続く)



2017年12月5日火曜日

「Windowsですか?」(その13)[流涎のビエール・トンミー氏]




「Windowsですか?」

JANAのスチュワーデス(CA)は、今度は、ビエール・トンミー氏に声を掛けて来たのであった。

「ええ」

と答えながら、ビエール・トンミー氏は、合点した。

おかしいと思っていたのだ。スチュワーデス(CA)が、エヴァンジェリスト氏にだけ、仕事を忘れ、声を掛けるのは、おかしいと思っていたのだ。

確かに、エヴァンジェリスト氏はハンサムではあるものの、自分で云うのも面映いが、自分の方が、エヴァンジェリスト氏よりずっとハンサムだ。

スチュワーデス(CA)は、美しい白いiBookではなく、実は、エヴァンジェリスト氏に魅かれていたのであろうから、美しい白いiBookは持っていないが、自分に対して、スチュワーデス(CA)が、仕事を忘れ、声を掛けて来て、何ら不思議なはないのだ。いや、必然ですらあるのだ。

だから、スチュワーデス(CA)は、今度は自分に、

「Windowsですか?」

と、声を掛けて来たのだ。

「ええ」

と、答えながら、ビエール・トンミー氏は、スチュワーデス(CA)の次の言葉を予期していた。

「いいですよねえ。アタシ……..」

と。

しかし、スチュワーデス(CA)が実際に発した言葉は…..

「いいです…….」





「いいですかあ、Windowsって?」

と、何やら不満気な声音で、スチュワーデス(CA)はそう云った。

「は?」

スチュワーデス(CA)の想定外の言葉に、ビエール・トンミー氏は、思わず顔をスチュワーデス(CA)の方に向けた。

「え!?」

そのスチュワーデス(CA)は、

「iBookですか?」

と、エヴァンジェリスト氏に声を掛けたスチュワーデス(CA)であった。少なくともビエール・トンミー氏にはそう見えた。

そのスチュワーデス(CA)は、先程、エヴァンジェリスト氏に未練を残したまま機内前方に向ったはずであった。まだ、自分の後方に戻れている程の時間は経っていないはずだ。

スチュワーデス(CA)は、同じ制服を見ているので、別のスチュワーデス(CA)を見間違えているのだろうか?

しかし、ビエール・トンミー氏の疑問に被せるように、スチュワーデス(CA)が質問をぶつけて来た。

「Windowsって、使い辛くないですかあ?」




(続く)



2017年12月4日月曜日

「Windowsですか?」(その12)[流涎のビエール・トンミー氏]



JANAのスチュワーデス(CA)はエヴァンジェリスト氏の方に振り返り、iBookを見て(いや、エヴァンジェリスト氏を見て、であったであろう)、

「ふふ」

と、声は出さず微笑んだ。

その様子を見たビエール・トンミー氏は、

「エヴァの奴う…..!」

と、呻くと、怒りに喉が渇き、飲み物サービスでもらったりんごジュースを一気に飲み干した。

そして、空になった紙コップをPCのキーボードの上に置いたその時であった。

「お客様、飲み物のお代りは如何ですか?」

斜め後ろから、ビジネス・ライクな声がした。

ビエール・トンミー氏が、振り向こうとした時、その声は、

「あら……..」

と声音を変えたのであった。






「Windowsですか?」

そう声を掛けてきていたのは、スチュワーデス(CA)であった。彼女は、ビエール・トンミー氏氏の席の横に立った。

スチュワーデス(CA)は、ビエール・トンミー氏に、

「Windowsですか?」

と訊いて来たのだ。

「ええ」

と答えながら、ビエール・トンミー氏は、合点した。

そうか!今度は、俺の番なのだ!

おかしいと思っていたのだ。スチュワーデス(CA)が、エヴァンジェリスト氏にだけ、仕事を忘れ、声を掛けるのは、おかしいと思っていたのだ。

確かに、エヴァンジェリスト氏はハンサムだ。他ではそう見かけない程のハンサムな男だ。

しかし、自分で云うのも面映いが、自分の方が、エヴァンジェリスト氏よりずっとハンサムだ。

確かに、エヴァンジェリスト氏は、美しい白いiBookを持っている。だからと云って、俺を差し置いて、彼だけがスチュワーデス(CA)から、私語を離れ声を掛けられるのは妙だと思っていたのだ。

そもそも美しい白いiBookは口実なのだ。

スチュワーデス(CA)は、エヴァンジェリスト氏から離れる際に、

「ふふ」

と、声は出さず微笑んだ。その様子が総てを物語っていた。

スチュワーデス(CA)は、美しい白いiBookではなく、実は、エヴァンジェリスト氏に魅かれていたのだ。

であるなら、美しい白いiBookは持っていないが、自分に対して、スチュワーデス(CA)が、仕事を忘れ、声を掛けて来て、何ら不思議なはないのだ。いや、必然ですらあるのだ。

だから、スチュワーデス(CA)は、今度は自分に、

「Windowsですか?」

と、声を掛けて来たのだ。



「ええ」

と、答えながら、ビエール・トンミー氏は、スチュワーデス(CA)の次の言葉を予期していた。

「いいですよねえ。アタシ……..」

と。

しかし、スチュワーデス(CA)が実際に発した言葉は…..

「いいです…….」


(続く)



2017年12月3日日曜日

「Windowsですか?」(その11)[流涎のビエール・トンミー氏]



JANAのスチュワーデス(CA)が、勤務中の機内で仕事を忘れ、甘えた声で話し掛けている男は、『プロの旅人』であった。

ビエール・トンミー氏は、口の中で叫んだ。

「エヴァ!」

そう、ビエール・トンミー氏がよく知る男は、そう、彼の友人であるエヴァンジェリスト氏であった。

「iBookって、使い易いんですよね。使っている人に訊くと皆、そう云うんですう

『ですう』と、スチュワーデス(CA)に話し掛けられたエヴァンジェリスト氏は、

「ええ、使い易いですよ。全然違います。機会があれば、切替えて下さい」

と答えるに留めていた。

ビエール・トンミー氏は、自分なら、『機会があれば私がセットアップもお手伝いしますし、その後も分らないことがあればサポートしますよ』、と云うぞ、と思った。

しかし、エヴァンジェリスト氏は、『機会があれば、切替えて下さい』という以上の言葉を発しなかったからであるのか、スチュワーデス(CA)は、

「ええ…………」

と云ったまま、エヴァンジェリスト氏の席の横にまだ立ったままでいた。

そうか!焦らし作戦なんだな!







焦らして、焦らして、スチュワーデス(CA)の想いを更に募らせる作戦なんだ!汚い奴め!

ビエール・トンミー氏の顔の紅潮は、頂点に達しようとしていた。

「やっぱりいいですよねえ。いいなあ」

未練がましくそう云うと、スチュワーデス(CA)は、ようやくエヴァンジェリスト氏の側を離れた。

前方に向いながら、スチュワーデス(CA)は振り返り、iBookを見て(いや、エヴァンジェリスト氏を見て、であったであろう)、

「ふふ」

と、声は出さず微笑んだ。

その様子を見るビエール・トンミー氏は、髪に覆われた頭皮まで紅潮していた。

「エヴァの奴う…..!」

と、呻くと、怒りに喉が渇いたビエール・トンミー氏は、飲み物サービスでもらったりんごジュースを一気に飲み干した。



そして、空になった紙コップをPCのキーボードの上に置いた。

その時であった。

「お客様、飲み物のお代りは如何ですか?」

斜め後ろから、ビジネス・ライクな声がした。

ビエール・トンミー氏が、振り向こうとした時、その声は、

「あら……..」

と声音を変えたのであった



(続く)



2017年12月2日土曜日

「Windowsですか?」(その10)[流涎のビエール・トンミー氏]



「iBookって、使い易いんですよね。使っている人に訊くと皆、そう云うんですう

『ですう』と、JANA機内で甘えた声でスチュワーデス(CA)に話し掛けられている男は、ビエール・トンミー氏の知る男であった。

「ええ、使い易いですよ。全然違います」

と、すました声でスチュワーデス(CA)にそう答えたビエール・トンミー氏が座る席に数列前の席の男は、長年のMacユーザーで、ビエール・トンミー氏が、よく知る男であった。

「しかし、アイツ、何故、ここにいるのだ……」

と、ビエール・トンミー氏は、自問したが、答は分っていた。

アイツは出張中なのだ。アイツは、1年中、国内あちこちに出張しているのだ。アイツは、『プロの旅人』なのだ。

そう、アイツは………






スチュワーデス(CA)が、勤務中の機内で仕事を忘れ、甘えた声で話し掛けている男は、『プロの旅人』であった。

「エヴァ!」

そう、ビエール・トンミー氏がよく知る男は、そう、彼の友人であるエヴァンジェリスト氏であった。

『プロの旅人』氏同様、『プロの旅人』であるエヴァンジェリスト氏が、JANA機に乗っていることは全く不思議ではない。

むしろ、ビエール・トンミー氏が、その時、JANA機に乗っていることの方が不思議と云えば不思議であった。しかし、混乱と忿怒のビエール・トンミー氏は、冷静な判断力を失っていた。

エヴァンジェリスト氏は友人であるが、許せなかった。

何故、アイツが、白蛇の指のスチュワーデス(CA)から、恋人然とした声の掛けられ方をしているのだ。

スチュワーデス(CA)が、iBookに関心があり、iBookを機内で使っているエヴァンジェリスト氏に声を掛けていることは分っていた。

しかし、スチュワーデス(CA)の声は、ただ単にiBook使用者に対して質問をする声音ではなかったのだ。

「ええ、使い易いですよ。全然違います」

と云うエヴァンジェリスト氏に対して、スチュワーデス(CA)は、

「ですよねえ。いいなあ」

と更に甘えた声を発した。

「機会があれば、切替えて下さい」

エヴァの奴、どうしたのだ?俺なら、もっと云うぞ。

『機会があれば私がセットアップもお手伝いしますし、その後も分らないことがあればサポートしますよ』、と云うぞ。



しかし、エヴァンジェリスト氏は、『機会があれば、切替えて下さい』という以上の言葉を発しなかった。

だからなのか、

「ええ…………」

と云ったまま、スチュワーデス(CA)は、エヴァンジェリスト氏の席の横にまだ立ったままでいた。

そうか!焦らし作戦なんだな!

焦らして、焦らして、スチュワーデス(CA)の想いを更に募らせる作戦なんだ!汚い奴め!

ビエール・トンミー氏の顔の紅潮は、頂点に達しようとしていた。


(続く)



2017年12月1日金曜日

「Windowsですか?」(その9)[流涎のビエール・トンミー氏]



「iBookですか?」

JANAのスチュワーデス(CA)は、ビエール・トンミー氏の席の前方席に座る男に、そう声を掛けた。

前方席の男が手元のテーブルに置いていたのは、AppleのiBookであった。

「ええ」

男が答えた。

「いいですよねえ。アタシ、迷ったんです。Windows使ってるんですけど、iBookに切換えようかと思って……..でも、何か、勇気がなくって…….」
「ああ」
「いいんでしょう?」

スチュワーデス(CA)の言葉遣いは、もうスチュワーデス(CA)のそれではなくなっていた。

「ええ、いいですよ」

と、答えながらスチュワーデス(CA)の方に顔を向けた男の顔を、ビエール・トンミー氏は、その時、初めて見た。

「!」

ビエール・トンミー氏は、固った………..






「あ、アイツ、何故、ここに……」

と呟いて口を開けたままとなったビエール・トンミー氏の表情は、『唖然』という言葉を体現したものであった。

「iBookですか?」

と、スチュワーデス(CA)が声を掛け、それに答える男は、ビエール・トンミー氏の知る男であったのだ。

「使い易いんですよね。使っている人に訊くと皆、そう云うんですう

『ですう』というスチュワーデス(CA)の言葉遣いは、もうスチュワーデス(CA)のそれではなく、恋人に対して、とまではいかないものの、親しい人に対する物の言いようであった。

間違いなくアイツだ!

アイツは、長年、Macユーザーなのだ。Macintoshが世に出て間もない頃から(会社では、少なくとも1987年以降)、ずっと会社でもプリベートでもMacを使っているのだ。

「ええ、使い易いですよ。全然違います」

アイツは、すました声でスチュワーデス(CA)にそう答えた。

「ですよねえ。いいなあ」

スチュワーデス(CA)は、完全に自分の立場を忘れていた。彼女の姿を見ず、その言葉を聞いただけであれば、周囲の乗客は、OLが憧れの上司に甘えている、と思ったであろう。

「しかし、アイツ、何故、ここにいるのだ……」



と、ビエール・トンミー氏は、自問したが、答は分っていた。

アイツは出張中なのだ。アイツは、1年中、国内あちこちに出張しているのだ。アイツは、『プロの旅人』なのだ。

そう、アイツは………


(続く)