2019年6月18日火曜日

住込み浪人[その121]







「(な、な、なんだ!?)」

EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』収録中のスタジオCで光が、何かの光が、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼を射ってきたのだ。

「(『サトミツ』の視線か?)」

何だかいつも以上に挑戦的とも見える様子の『サトミツ』の視線に射られたのかと思ったのだ。

「(いや、また君か!)」

そう、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、直ぐにその強烈な光を放つ視線が、『サトミツ』から発せられたものではなく、また、観客席に身を潜めている友人から発せられたものであることを知った。

「(…………..)」

エヴァンジェリスト青年は、またもや。心から何を発せず、ただ冷徹な視線を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けていた。

「スミローちゃーん!頑張ってえー!」

何も知らないOK牧場大学の学食のカレー担当のオバチャンは、黄色い声援、いや、少し黒ずんだ黄色い声援を送っていた。

「(また、そういうことなのか?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、友人に問うた時、エヴァンジェリスト青年の冷徹な視線は、やはり『サトミツ』に向けられた。

「(ああ….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、『サトミツ』に視線を回した。

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、必死に、文字通りと云っていい程に必死に、回答ボードにマジックを走らせていた。

「(『サトミツ』は書けるんだ。やはり『オコガマシイ』をちゃんと『烏滸がましい』と書けるんだ。さすがだ)」

そして、その必死の横顔を見た『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の股間は、『条件反射』した。


「(んぐっ!)」

と股間を『反応』させた。


(続く)



2019年6月17日月曜日

住込み浪人[その120]







「では、続いて、第2問です!」

EBSテレビのスタジオCで収録の進むクイズ番組『テイトー王』のファイナル・ステージが、まだ続いていた。

「『オコガマシイ』を漢字でどう書く?」

『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、第2問を読み上げた。

「(ん?)」

スペシャル・サポーターとして芸能人チームの回答者席に座る『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、首をひねった。

「(なんだ?)」

上目遣いに何かを思い出そうとしていた。

「(あ!そうか…….)」

そうだ。あの日、OK牧場大学構内にある浪人生専用の『寮』で起床し、共同台所まで行ったところで、他の『住込み浪人』二人が、同い年のOK牧場大学の1年生に漢字の書き取りの指導を受けているのを見たことを思い出した。

「じゃあさあ、『オコガマシイ』って書けるかなあ?」

OK牧場大学の1年生は、口の端を歪め、『住込み浪人』二人に対して嘲るような言い方をしたのであった。

「(『オコガマシイ』?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、その時、『オコガマシイ』を漢字でどう書くか、知らなかった。

「あれ、ひょっとしてビエール君かい?」

OK牧場大学の1年生が、台所から、声を掛けて来たので、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、踵を返して、OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』を出た。

「マズイ!マズイ!.......『オコガマシイ』って、どう書くんだったけ?」

あのOK牧場大学の1年生に馬鹿にされたくなかった。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、二浪目であったから、現役合格のあのOK牧場大学の1年生より一つ歳上だ。だから、

「あの生意気な若造に馬鹿にされるなんて….」

と、『そのまま』、つまり、パジャマを着たまま、OK牧場大学の『住込み浪人』用の『寮』を出た。

「(しかし、今は書ける。『オコガマシイ』を漢字で書けるぞ!)」

そうだ。あの出来事の後、辞書で調べ、覚えたのだ。

「(ふふ)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、北叟笑んだ。

「(どうしてまた、最近、自分の周りであったようなことが問題になっているのだろう?)」

という疑問が頭をよぎったが、『オコガマシイ』で恥をかかなくて済む、という思いの方が強く、回答ボードに、マジックで『烏滸がましい』の『烏』の文字を書き始めた。


「(うっ!)」

マジックを持った右腕を顔に持っていき、両眼を塞いだ。


(続く)



2019年6月16日日曜日

住込み浪人[その119]







「あれあれ?『サトミツ』どうしたのかなあ?『椿象』と書けたのは、まぐれですか?」

ナンカイノー・アメカイノーのツッコミは強烈であった。EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』収録中のスタジオCで、何かに囚われ、質問も耳に入っていないような様子の『サトミツ』を追い詰める。

「いや、カンニングでもしたか!どうして『椿象』と書くのか、判らないのかあ!?」

ナンカイノー・アメカイノーの挑発に、テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、ようやく自分を取り戻した。

「んもー!判りますう!」

『サトミツ』は、丸く開けていた口を閉ざし、今度は、それを尖らせた。


「中国に、『香椿』と書く『チャンチン』って臭い木があるです。カメムシって臭いでしょう。だから、『香椿』の『椿』を使ってるんですう」
「ほほー。さすが『サトミツ』。では、「『象』は何ですか?」
「文字通り、『象』(ゾウ)です。口先が、象の鼻みたいですもの」

『サトミツ』は、いつもの『サトミツ』に戻っていた。

「(んぐっ!)」

『サトミツ』とナンカイノー・アメカイノーのやり取りを見ていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は…..いや、口を尖らせながら、ナンカイノー・アメカイノーに向かっていく『サトミツ』を見ていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、股間を抑えた。

「(ああ、これが『サトミツ』だあ…..んぐっ!)」


(続く)



2019年6月15日土曜日

住込み浪人[その118]







「ブーッ!」

EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCにブザー音が響いた。

「はーい!時間です」

『テイトー王』の司会者の一人、ナンカイノー・アメカイノーが、右手を開いて前に突き出し、回答ストップを命じた。



「では、皆さんの回答を一斉に開きまーす!」

というナンカイノー・アメカイノーの声と共に、回答者全員のボードがスクリーンに映し出された。

「正解は、この方々でーす!」

と、ナンカイノー・アメカイノーが明かした正解者は、スクリーンに映し出されたボードが、点滅した。

『テイトー』チーム3名は、全員正解、芸能人チーム3名には、誰も正解者はいなかった。

「正解は、『テイトー』チームの皆さんの回答の通り、『椿象』と書きます」

ナンカイノー・アメカイノーは、更に続ける。

「では、どうして『椿象』と書くのか、お判りでしょうか?『佐藤ミツ』さん、説明して頂けますか?」

カメラは、『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』を捉えた。

「え?」

『サトミツ』は、ナンカイノー・アメカイノーの質問を聞いていなかった。美人も台無しな感じで口を開けたままでいた。

「(どうして?どうしてなの?)」

『サトミツ』は、敵を凝視めた。回答席に座ったまま、背筋を伸ばし、自信たっぷりな様子を今も見せている『住込み浪人』ビエール・トンミー青年への疑問が、頭の中に渦巻いていた。

「(何も書いてないって、どういうこと?『椿象』って知らなかったの?)」

そうだ。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の回答ボードには、答は書かれていなかった。いや、マジックで『木偏』を書き、それをバッテンで消した跡が見えた…….

「(漢字を全部思い出せなかったの?いや、判ってたのね。だって、自信たっぷりだもの……じゃあ、どうして?どうしてなの?)」


(続く)



2019年6月14日金曜日

住込み浪人[その117]







「(君とボクとは、価値観を同じくするのだ)」

EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCで、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、誰に聞かれることもなく、心の声で、観客席にいる友人のエヴァンジェリスト青年に、彼の魂に、語りかけた。

「(そうだ…….だから、ボクは『テイトー』入学を辞退したのだ)」
「(…………..)」

友人は、無言である。

「(だから、ボクは今、答えない。このボードに『椿象』と書かない)」

回答席に座ったまま、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、背筋を伸ばした。



「(何?)」

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、敵の姿勢が自信たっぷりなものに見えたのだ。

「(書けたのね。『椿象』だと知っていたのね。やはり侮れないわ)」

もう一人、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の正解を信じた者がいた。

「スミローちゃーん!さすがよー!」

オバチャンである。OK牧場大学の学生食堂のカレー担当のオバチャン『サキ』である。


(続く)



2019年6月13日木曜日

住込み浪人[その116]







「(同じだ)」

それは、心の声というよりも、心のもっと深いところ、そう、魂とも呼ぶべきところから出てきているような声であった。エヴァンジェリスト青年のその声を、EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCの中で、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年がただ一人、捉えた。

「(君も同じだな)」
「(え?)」
「(あれは、さっきまでの君の姿だ)」

変わらず冷徹な視線を『サトミツ』に向けたエヴァンジェリスト青年の、その魂から出たかのような声である。

「(んぐっ!)」

と、必死な『サトミツ』の姿に『反応』する股間とはアンチノミーな理性は、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年をして、友人エヴァンジェリスト青年の云わんとすることを理解させた。



「(そうか…….そういうことなんだな?)」
「(…………..)」

友人は、何も答えない。

「(正解は、判っている)」
「(…………..)」
「(ああ、だが、答えない)」
「(…………..)」
「(そうだ。『サトミツ』はあれでいい。『サトミツ』なのだから)」
「(…………..)」
「(しかし、ボクは……..)」
「(…………..)」


(続く)



2019年6月12日水曜日

住込み浪人[その115]







「(エ、エ、エヴァ…….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、回答ボード上でマジックを持つ手を止めていた。EBSテレビのクイズ番組『テイトー王』を収録中のスタジオCである。

「(君も応援に来ていたのか、エヴァちゃん)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の両眼を射てきていた光の主は、そう、エヴァンジェリスト青年であった。

「(…………..)」

エヴァンジェリスト青年は、心から何を発せず、ただ冷徹な視線を『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に向けていた。

「(何?何なんだ?君は、何を云いたいのだ?)」
「(…………..)」
「(云いたいことがあるなら、いつもように心の声で云えばいいじゃないか!)」

その時、エヴァンジェリスト青年の冷徹な視線は、『サトミツ』に向けられた。

「(え?)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年も、『サトミツ』に視線を回した。

『テイトー王』のクイーンである『テイトー』(帝立大学東京)の学生にして、スタンハンセン大学も認めた才媛である『サトミツ』こと『佐藤ミツ』は、必死に、文字通りと云っていい程に必死に、回答ボードにマジックを走らせていた。


「(『サトミツ』は書けるんだ。やはり『カメムシ』をちゃんと『椿象』と書けるんだ。さすがだ)」

そして、その必死の横顔を見て、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず、

「(んぐっ!)」

と股間を『反応』させた。

「(ふん!)」
「(え?)」


(続く)