2023年1月20日金曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その8)

 


「(この本は、まだ読んではないが、『アーミッシュ』本らしい表紙だ)」


ビエール・トンミー氏は、買っただけでまだ読んではいない(キスしたり、頬ずりしたり、匂いを嗅いだリハしたが)本『アーミッシュの老いと終焉』の虚飾なく、ただ帽子が壁にかけられた様を映した表紙を気に入っていた。


と、その本を見る目の端で、iPhone 14 Proの画面が軽く、自動でスクロールした。


友人のエヴァンジェリスト氏からのIMessegeである。



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「『イゾラド』は、馬車も使うとらんかったあ思うがのお」

「はああん?『イゾラド』?なんや、それ?」

「アマゾンの源流の辺りに住む、所謂『先住民族』よおね。『イゾラド』は、ポルトガル語だと、『Isolado』だ。フランス語が堪能な、いや、フランス語経済学が堪能な、『SNCF』大家のアンタならピン!と来たあ思うが、フランス語の『isolé』と同じじゃ」

「ああ、それかあ。ああ、分るで。分るけど、アンタに説明させたる。どういう意味か云うてみいな」

「英語だと、『isolated』で、つまり、『孤立した』ちゅうような意味じゃ。語源的には、『島』じゃのお。フランス語で、『島』は『île』じゃあいうんは知っとるじゃろ?」

「あ、おお、おお、知っとるで」

「それに、今は『île』じゃったが、昔は『isle』じゃったことも知っとるよのお?」

「当然やで」

「『isolé』は、その『isle』から来た言葉で、つまり、『島』んように『孤立した』いうような意味じゃのお」

「おお、その通りじゃ。ようでけたで。『ロビンソン・クルーソー』な感じじゃ。で、その『イゾラド』が、どねえしたんや?」




「『イゾラド』はのお、原始的な生活しとるんよ。まあ、この『原始的』いう云い方は、こっちの思い上がりな云い方じゃろうし、『先住民』いう云い方も、『イゾラド』からしたら、後から勝手に来た連中が勝手にそう呼んどるだけじゃあ、思うじゃろう。ブラジル政府は、『イゾラド』を保護しようとしとるらしいんじゃが、『イゾラド』の他にもブラジルには、先住民族がいくつかあるらしいんじゃが、先住民族側は、そもそも自分たちのことを『ブラジル人』とは思うとらんじゃろう」

「アンタ、大丈夫か?なんか、真面目になってきとるやないか」


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とは云ったが、ビエール・トンミー氏は、友人のエヴァンジェリスト氏を心配したのではなかった。


「(アイツ、今度は何を企んでいるんだ?)」


そうだ。エヴァンジェリスト氏が、ただただ真面目な話をする訳はないのだ。



(続く)




2023年1月19日木曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その7)

 


トゥルントゥ」


また、『ホルン』音が鳴った。ビエール・トンミー氏が、もう50年も前の大学受験の頃を思い出している間に、iPhone 14 Proが、ロック画面になっていたのだ。


「(けっ!なんで、いちいちアイツの戯けた顔を見ないといけないんだ)」


iPhone 14 Proのロック画面の友人のエヴァンジェリスト氏の戯けた画像が、エヴァンジェリスト氏からのiMessageの着信を示していた。



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「どしたんね?アンタ、ひょっとしてロリコンやったんかいねえ?」

「このどアホがあ!『快楽』や、ああ、『快楽』や」

「ああ、最近は、『熟女』がようなったん?」

「アンタ、ホンマにオゲレツやなあ。『アーミッシュ』とはえらい違いや」

「また、『アーミッシュ』なん?」

「またやないで。さっきから『アーミッシュ』のこと、話してたやんか。それをアンタが、妙な方向に話を持ってっただけや。ええか、『アーミッシュ』はなあ、『快楽』禁止なんや。『快楽』ばっかし求めとるアンタとはえらい違いや」

「えええ!ほうなんねえ。『アーミッシュ』いうんは、しんどい人たちじゃねえ」

「アンタの考える『快楽』だけ禁止なんやないんや。総ゆる『快楽』が禁止なんや。酒もタバコもアカンねん。それどころかやなあ、『アーミッシュ』は、現代でも電気を使わず、車も使わず馬車だけ使い、移民当時の衣服を着て質素な生活をしとるんや。自動車の走ってとる道の横を馬車に乗っとる光景をアンタ、見たことないんか?それ、『アーミッシュ』やで」

「ああ、ニューヨークの街中を馬車が走っとるんは、見たことあるで。ニューヨーク行った時に見たんじゃったか、テレビで見たんかは忘れたけどのお」

「アホ、それは、観光用や。『アーミッシュ』が住んどるんは、アメリカのペンシルバニア州なんかの田舎や。カナダのオンタリオ州にも住んどるらしいんやけどな」

「ふん!まあ、ニューヨークでもペンシルバニアでもええけど、『アーミッシュ』も甘いのお」

「なんやて!」


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「(怒ることではないが、アイツ、ボクの云うことにいちいちケチをつけてくるのが、ムカつく)」


と、ビエール・トンミー氏は、ベッドサイドのテーブルに置いた本『アーミッシュの老いと終焉』に眼を落とした。


「(アイツ、『アーミッシュ』の爪の垢でも煎じて飲めばいいいんだ)」





(続く)





2023年1月18日水曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その6)

 


「(んん?だが、何故、『ドイツ』か『スイス』かなんて話になってたんだったかなあ?)」


と、疑問に思いながら、ビエール・トンミー氏は、身を横たえた自分の部屋のベッドから、天井にペコちゃんの眼のような視線を送った。


その時、また、


「トゥルントゥ」


『ホルン』音が鳴った。iPhone 14 Proのロック画面に友人のエヴァンジェリスト氏の戯けた画像があった。少しの間、エヴァンジェリスト氏からのiMessageが途絶え、ロック画面になっていたのだ。


「(けっ!アイツ、まだなんか云ってくるのか)」



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「すまん、すまん。返信が遅うなってしもうた」

「謝らんでエエ。返信もせんでエエで」

「いや、ちょっと、『オシッコ』しとったんよ。『座りオシッコ』なんよ、しばらく前からそうするようにしとるんよ」

「余計な報告はいらんで」

「それにしても、アンタ、さすが『世界史のプロ』を自認するだけのことはあるのお」

「ああ、世界史はのお、受験時は(大昔やけど)、どの入試問題も満点の自信あったでえ。このワテが今年の共通テストの世界史やっててみたんや。久しぶりや。結果は難しかったでえ。出題の仕方が全然変わっとるんや。複数の資料から必要な情報を読み取り、総合的に判断させて回答する様に問題が作られとるんや。この出題傾向に慣れんとアカン。多分(見てへんから知らんが)、コレ、私立の出題傾向と全然チャウで。共通テストを取り入れる私立を受験する学生は、ちゃんとした対策が必要やさかい大変やで。現代文も同じ傾向の問題やった。やっぱり複数の資料で考えさせるんや」

「アンタあ、この際、もう一度、大学受験してみん?」

「今から大学に行くドーキがないさかい、それな、ないで」

「大学生生活を満喫したらエエじゃないねえ。若い娘たちと合コンしんさいや」

「アンタ、大学一年生は50歳(半世紀や)年下やで。姪よりずっと年下や。ちゅうか、ワテの姪の子、それ、なんちゅう云い方の関係なんか知らんけど、小学3年生やさかい、大学一年生は、そっちの方に年齢が近いで」

「姪の子はのお、『又姪』とか『姪孫(てっそん)』とかいうらしいで」

「アンタもさすがの『デジタル・ハンター』やな。ネット検索、えろう速いで」

「小学生に年齢近い娘には、さすがのアンタも手を出さへんやろな。若い娘好きやけど、アンタ、ロリコンやないやろからなあ、多分」

「多分やあらへん、完全にせやないで。あ!ワテ、なんでこないな話せんなあかんねん。アンタとメッセージ交換しとると、話がどんどんオゲレツな方向に行ってまうがな」

「アンタも根がオゲレツなんじゃろうねえ」

「一緒にせんといて欲しいで。ワテ、アンタと違うて、快楽に溺れたりせえへんねん。あ、せや、快楽や」


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「(ふん、そうだ。ボクは、快楽に溺れたりはしない。…いや、溺れたいが、その『元気』がない)」


と、ビエール・トンミー氏は、自らの股間に視線を落とした。


「(大学受験の頃は、あんなに『元気』で、勉強の妨げになるくらいだったのに)」





(続く)





2023年1月17日火曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その5)

 


「(どう誤魔化そうか…)」


ビエール・トンミー氏は、iPhone 14 Proを右手に持ったまま、画面を凝視していたが、眼には何も見えていなかった。


自分の犯した『失策』に、友人のエヴァンジェリスト氏が突っ込んでくることは明らかだった。


『エロ本』ではないが、前日に買った本『アーミッシュの老いと終焉』にキス、頬ずりをしたのは確かだった。その本を買った書店のお気に入りのレジの若い女性店員の手が触れたものだったからである。


「(でも、匂いを嗅いだなんて、余計なことを云ってしまった)」


エヴァンジェリスト氏は、『エロ本』にキスや頬ずりをしていたのではないのか、としか云ってきていなかったのだ。



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「アンタ、『エロ本』の匂い嗅いだんか?」

「ちゃう、ちゃう!『エロ本』の匂いなんか嗅ぐかいな」

「ということは、アンタが、『チュー』したり、頬ずりしたり、匂いを嗅いだんは、『エロ本』じゃのうて、他の本じゃったんじゃね」

「へ!?あ、いや、ホンマ、エエ加減にせえよ。屁理屈ばっかし云うてからに」

「はああん。さては、アンタが『興奮』しとったんは、『インモー』が描かれた『西洋美術』関係の本じゃの?」

「ちゃう、ちゃう。それは、ちゃう。あ、ちゃうけど、ちゃいへん。そうや、ワテが、昨日、あの本屋で買うたんは、『エロ本』やなけいど、『西洋美術』の本でもないんや」

「『あの本屋』?」

「ん?」

「『あの本屋』て、なんか意味深じゃのお」

「あんな、いちいち、他人の言葉に引っかかんやないで。ああ、あの本屋や。ああ、ワテがいつも行く本屋や。そこで、ワテが昨日、買うたんは、『アーミッシュの老いと終焉』ちゅう本なんや」

「『アーミッシュ』?」

「『アーミッシュ』ちゅうのは、ドイツ系(スイス系?)移民のアメリカ人キリスト教徒(カトリックでもプロテスタントでもない)のコミュニティや」

「ドイツ系、スイス系どっちなん?」

「はあ?どっちでもエエやろ」

「そうようにいい加減なんはようないで」

「あんな、アンタ、『前提』がどうのこうの云うとったのお」

「ああ、云うたで」

「ほな訊くが、『ドイツ』てなんや?『スイス』てなんや?」

「おお、なるほどのお」

「アンタ、『ドイツ』いうたら、今の『ドイツ』いう国のことと思うたじゃろうが、そういうことやないねん。『スイス』も同じや」

「そうは思うわんかったが、エエで、エエで、アンタ、なかなかエエで」

「『スイス』の東部は、昔のお、『東フランク王国』やったんや。今の『ドイツ』の元になった国やな」

「おお、『東フランク王国』かあ。なんか懐かしいのお。確か、世界史にあったのお」

「『ハイジ』の舞台になったちゅう『マインフェルト』村も『スイス』の東部にあるさかい、『ハイジ』もドイツ語を喋んねん。尤も、『スイスドイツ語』いう、なんか訛ったドイツ語らしいけどのお」




「ワシが、テレビで見た『ハイジ』は、日本語を喋っとったでえ」

「ああ、そうですか、そうですか。でやなあ、『東フランク王国』のん頃の『スイス』は、まあ、東部やけど、『スイス』なんか?『ドイツ』なんか?」


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「(ふふ。アイツに、アイツ流の『前提』崩しで切り返してやった。ざまあみろ!)」


落ち着きを取り戻したビエール・トンミー氏は、自分の部屋のベッドに、もう一度、身を横たえ、北叟笑んだ。



(続く)




2023年1月16日月曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その4)

 


「(あの娘が触った本だ)」


ビエール・トンミー氏は、前日に購入した本『アーミッシュの老いと終焉』を、鼻に近付け嗅いだ後、今度は、表紙の是拍子に近い部分に、そっと自らの唇を付けた。


「(この辺に触ったはずだ)」


そして、続けて、その本に頬ずりをした。


「(あの娘は、『まあ、こんな高尚そうな本をお読みになるなんて、大学教授かしら?それとも評論家?』という眼でこっちを見てきたんだ。ふふ)」


と、軽く微笑んでから、本を裏返し、背表紙に眼を遣った。


「ふん、確認するまでもないことだ」


と、小さくだが、声に出して呟いた。


そうして、友人のエヴァンジェリスト氏に返信のiMessageを送った。



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「そうだ。ワテは、昨日も本を買った時に、ちゃんと消費税を払うたんや」

「おい、なんか、返信に間があったのお。昨日買ったその『エロ本』を見て、興奮でもしとったんか?『エロ本』にキスとか頬ずりとかしとったんじゃないんかいねえ?」

「な、な、何、云うねんな!アンタ、今更やが、アホちゃうか」

「おお、狼狽しとるのお。図星じゃったんじゃね」

「ちゃう、ちゃう。今時、誰が、『エロ本』買うんや!」

「ああ、確かにのお。アンタ、学生の頃は、夜中、下宿抜け出して、『ビニ本』の自動販売機で『熟女』モンなんかを買うて、部屋に持ち帰って、蠢いとったんじゃろうけど」

「アホ抜かすなて。ワテ、学生の頃からオゲレツやったアンタとはちゃうで」

「ああ、そうじゃったのお。アンタあ、昔から『若い娘』好きじゃってけえ、『熟女』モンなんかを買わん買ったじゃろう。『女子高生』モンか?」

「アホらし。『熟女』モンも『女子高生』モンも『ビニ本』か『エロ本』かしらんが、買うたことないわ」

「ほうかあ。まあ、そうよのお、今時は、『エロ本』じゃのうて、ネットでなんでも見れるけえ、アンタ、パソコンの画面に『チュー』でもしとったんかいね?」

「なんが『チュー』や!『チュー』も頬ずりもせえへん。匂いかて嗅げへんて」

「え?!」


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「(しまった!)」


ビエール・トンミー氏は、自らの『失策』に戸惑った。


「(濡れ衣だ!ボクは、『エロ本』なんか買ってないし、『エロ本』にもパソコン画面にも『興奮』なんかしてないのに!)」




と自らに云い聞かせる言葉は、嘘ではなかったが、嘘でもあることを自覚していた。



(続く)




2023年1月15日日曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その3)

 


「は?」


朝の起きがけの『オシッコ』から自分の部屋に戻ったビエール・トンミー氏は、iPhone 14 Proの画面に、友人のエヴァンジェリスト氏の戯けた顔を見た。『通知』だ。


「(まだ、メッセージを送ってきているのか。それにしてもしつこい奴だ)」


と、思ったが、iMessageを開いた。



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「ところでのお、質問のチョコレートとガムを売っとった店は、免税事業者なんかいね?」

「知らんがな」

「いや、ワシ、『消費税のことが考慮されとらんのがおかしい』と云うてしもうたが、免税業者じゃったら、消費税をとっとらんかもしれんけえ」

「ただの算数の問題だ。消費税とか免税とか関係ないだろう」

「いや、教育の世界が、一般世間と隔絶されたところにあってはいかんだろう」

「ああ、じゃあ、免税事業者だった、っていうことにしておけばいいだろう」

「ということは、『課税期間の基準期間』に於ける『課税売上高』が、1000万円以下だった、ってことなんじゃの?」

「はああ?なんじゃ、『課税期間のなんちゃら』とか『課税売上高』ちゅうのは?」

「『課税期間の基準期間』の『課税期間』とは、消費税の計算期間のことで、通常、個人であれば1月1日~12月31日で、法人じゃったら、事業年度なんじゃと。 『基準期間』は、納税義務の判定の基準となる期間のことで、原則として個人事業者は前々年、法人は前々事業年度なんじゃと」

「はあん?なんかややこしいこと、云いよんなあ。よう分らんが、どうでもエエわ」

「『課税売上高』は、消費税の課税対象となる取引の売上高をのことで、殆どの取引に係る売上高が『課税売上高』なんじゃが、土地の売却収入、住宅家賃、社会保険診療報酬なんかは、消費税の非課税取引に係る収入等は除くんじゃと」

「はあん?まあ、どうでもエエが、要するに、チョコとガムを売っとった店が、免税事業者やったら、チョコとガムを買うたもんに消費税を払わさんでもエエちゅうことなんやな?」

「そこはそうじゃないんよ。チョコとガムを買うた人は、消費税を払う必要は別にないんよ」

「あんな、アンタ、何云うてんねんな。ワテら健全なる消費者は、ちゃんと消費税を払わなあかんで」

「アンタが健全な人間かどうかは大いに議論の余地のあるところじゃが、アンタが健全であろうとなかろうと、消費者には、消費税の納税義務はないんでえ」

「せやけど、店でなんか買う時、ちゃんと値札に消費税が書いてあるで。で、ワテはちゃんと消費税を払うとるんや」


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と、友人に返信したところで、ビエール・トンミー氏は、ベッドサイドのテーブルに置いた本『アーミッシュの老いと終焉』を手に取り、眼を閉じ、そーっと鼻に近付け、嗅いだ。


「あはあ…」


と、吐息を漏らした。


『アーミッシュの老いと終焉』は、前日、駅近くの書店で購入したものであった。


何日か前から買うつもりでいたが、レジにあの娘がいる時を狙っていたのだ。ポニーテールの二十歳そこそこの娘だ。




(続く)




2023年1月14日土曜日

チョコガム問題【非ハーバード流屁理屈論】(その2)

 


「トゥルントゥ」


ベッドサイドに置いてあったiPhone 14 Pro が震え、『ホルン』音がなり、目を覚ましたビエール・トンミー氏は、片眼を開け、手を伸ばし、FaceIDでロック解除した。


「(ふん!朝っぱらから!)」


見るまでもなく、『ホルン』音で、それが、友人のエヴァンジェリスト氏からのiMessageであることは分っていたが…


「(なんだ。昨日の続きか)」


友人は、しつこくも『チョコガム問題』について、クレームを入れてきていたのだ。



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「昨日の質問なんじゃが、アンタが、『デラシネ牛田中学生』の頃、つまり1967年頃じゃったら分らんでもないんじゃ。いや、その頃、チョコレートが1個105円で、ガムが1個5円じゃったかどうかも怪しいがのお。それにガムの1個いうんは、6枚入りのが1個なんか、1個5円じゃのうて、正確には、1枚5円なんかもよう分らん。アンタが出してきた問題は、ちょっと前提が不十分じゃあ、思うで」

「また屁理屈かいな」

「少のうても、今時、5円のガムなんかないで。それに、大体、消費税のことが考慮されとらんのがおかしいで。消費税を考慮に入れたら、計算、難しいで。対象が食品じゃけえ、税率は8%じゃろ。とすると、割り切れるんかのお?」

「ハイ、ハイ。そうですか、そうですか」

「それに、ガムが10円でも必ずしも間違うてないかもしれんよ。ガムが10円、チョコが110円。で、セット買うと、値引きされて110円になったんかもしれん。セット販売とか、値引きがあったとかなかったとかの言及がないけえ、問題はやっぱり不十分じゃ。世の人間は、素直すぎるんじゃ。与えられた問題、それ自体を疑わず、ただただ素直に回答しようとするもんじゃ。じゃが、与えられ問題に、『問題』があるかもしれん。提示された前提が妥当ではないかもしれん。或いは、前提自体が、条件不十分なもんかもしれんし、問題提示者自身が気づかん条件が漏れとることもあるかもしれんけえね。」

「ハイ、ハイ。そうでしょう。そうでしょう。でも、ええか。この『チョコガム問題』に関する調査結果を教えたるで


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・調査日 2023/1/11

・対象者.   3名

・結果  正解2名、回答拒否1名

・詳細

  ⓵妹   正解(回答時間10分)

  ②家内    正解(回答時間不明)

  ⓷下劣人 回答拒否、妄言を吐く

・考察

トンミー家関係人は、いたって正常な思考回路を持ち健全と判断する。下劣人の反応は当初の予想の範囲の反応を示す。甚だしく異常であると判断する。背景には鬼畜の家系の遺伝的影響が有るものと推察される。

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どないじゃ」

「下劣人いうんは、ワシのことじゃろ?最上級の褒め言葉じゃのお。有難や、有難や。こんたびのアンタの質問は、ホンマ、有り難いで。多分、『プロの旅人』氏が、ネタにすることじゃろ。アンタ、もう読んどらんじゃろうが、1年以上もダラダラ続く『【牛田デラシネ中学生】変態の作られ方』の箸休めネタを読みたかったけえね。その箸休めネタの中で、ワシは、アンタから徹底的にこき下ろされるんじゃろうけえ。なんか、ワクワクするで。こうような反応は、歪んとるんじゃろうか?」

「甚だしく異常である」


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と、返信すると、ビエール・トンミー氏は、寝起きの『オシッコ』へとトイレに立った。


そして、座り『オシッコ』をしながら(そうしないとマダム・トンミーに叱られる)、




「(ホントにアイツは、『甚だしく異常』だ)」


と、思いつつも、ビエール・トンミー氏は、自分がまたその『甚だしく異常』な友人にメッセージを送ること、また、何か、自分が興味を惹かれた問題を友人に提示してしまうことを知っていた。


他に友人はいないからである。



(続く)