「エヴァさん、曲がれるよね?」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、『森英恵』先生の会社に入社したものの、半年で辞めてしまったが、決して『曲がった』ことをした訳ではない、と思った。
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ビエール・トンミー氏は、1979年、友人であるエヴァンジェリスト氏の上井草の下宿に来た際に、駐車違反になってしまった。
「ああ、君は、犯罪者になったんだ」
と云うエヴァンジェリスト氏の言葉にビエール・トンミー氏は強く動揺した。
駐車違反は、実は、ビエール・トンミー氏にとって『初犯』ではなく、その前に、もう一つ、別の『犯罪』を犯していたのである。だから、ビエール・トンミー氏は動揺したのだ。
ビエール・トンミー氏がエヴァンジェリスト氏の上井草の下宿まで乗って来た『ビートル』は買ったばかりで、その日が初めての運転であったが、それはまた、ビエール・トンミー氏にとって、免許を取って初めての運転でもあった。
駐車違反を犯す何時間か前、即ち、上井草に行く前に環状7号線を走っていた時(環状7号線を走るのも、勿論、初めてであった)、突然後ろからサイレンの轟音が鳴った………
ビエール・トンミー氏は、バックミラーを見た。
赤いランプを両脇に点滅させた白いオートバイが迫って来ていた。運転者は、ブルーのボディー・スーツを着用し、白いヘルメットを被っている。
バックミラーで確認するまでもなかったが、白バイであった。
白バイは、あっという間にビエール・トンミー氏の『ビートル』に追い付き、左側を並走すると、手で止まるよう指示を出した。
「しまった」
と思った。
「スピード違反か……」
そう、免許を取って運転したその日に、ビエール・トンミー氏は、スピード違反で警察に『捕まった』のだ。
「どうするのだ…….ああ、どうなるのだ…….?」
(続く)
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