「エヴァさん、曲がれるよね?」
列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、『曲がったことが嫌いな男』である自分は、昭和30年代、40年代と万年Bクラスだった頃からずっとカープ・ファンなのだ、と思った。
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1979年、免許を取って初めて運転したその日、ビエール・トンミー氏は、フォルクスワーゲンの『ビートル』で、環状7号線を走っていた時、白バイにスピード違反で『捕まった』。
ピッカピカの免許証を取り出し、白バイ警官に渡したビエール・トンミー氏は、
「ボ,ボ,ボクは、逮捕される……」
と、呆然としていたが、思いもかけないものを耳にした。
「ふふ」
微かだが、笑い声であった。
「今日なんだね?」
白バイ警官が微笑を浮かべながら訊いてきていた。
「今日、免許を取ったんだね。にしては、いいクルマに乗っているじゃない」
「はあ……」
免許を取ったその日に初めて運転し、即、スピード違反で『捕まった』のだ。『スピード違反』といっていいスピードで『スピード違反』をしてしまったのだ。
「スピードは出し過ぎちゃいけないこと、分ってるよね?」
白バイ警官は、諭すような言い方をした。
「….はい….」
「教習所で習ったよね?まあ、習うまでもなく、子どもでも知ってるけどね」
「….はい….」
「今日、免許を取って、今日初めて運転してウキウキしてたのかなあ?」
「いえ、そういう訳では…..」
「ウキウキしていても、ダメなものはダメだよ」
「….はい….」
「彼女のところにでも行くところ?この『ワーゲン』に乗せるの?」
「いえ、友だちのところです。男の…….男の友だちです」
「まあ、彼女でも友だちんちでも、スピード出し過ぎは危ないよ」
「….はい….」
「アナタ、頭良さそうだし、ハンサムなんだから、こんなことしちゃいけないよ」
「….はい….」
「うん、では、交通安全に気をつけましょう」
と云うと、白バイ警官は、ビエール・トンミー氏に免許証を返してそのまま走り去って行った。
「……..!?」
ビエール・トンミー氏は、唖然として、轟音を立てて走り去る白バイを見送った。
(続く)
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