2018年3月28日水曜日

【曲がったことが嫌いな男】石原プロに入らない?入れない?[その47]



「エヴァさん、曲がれるよね?」

列のすぐ前にいた女性が振り向いて云ったその言葉を聞いた時、エヴァンジェリスト氏は、自分と同じで『曲がったことが嫌い』な貴乃花光司が、弟子の貴公俊が付き人に暴力を振るってしまった事件の関係からか、日本相撲協会に関する内閣府への告発(弟子の貴ノ岩への暴行事件に関するものだ)を取り下げる検討をせざるを得なくなることを、まだ知らなかった。

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上池袋の下宿で起きた『泣き声事件』の前年(1981年)、エヴァンジェリスト氏は、下宿の隣室の隣室に住む50歳台と思しき『お父さん』に頼まれて、『お父さん』のベッドを『上福岡』にある『お父さん』の自宅まで運ぶアルバイトをすることになった。

エヴァンジェリスト氏は、ベッドを載せた2トン・トラックを運転する『お父さん』の隣の助手席に乗り、上池袋を出発した。

道すがら、『お父さん』は、自身の仕事のこと等を説明したが、エヴァンジェリスト氏は気になることがあった。

「何故、『上福岡』という名前なのだろう?『上福岡』があるのは、埼玉県であって福岡県ではないのに」

地名の由来への疑問であった。

「いや、『上福岡』だけではないぞ。『東松山』だってそうだ。『東松山』があるのは、埼玉県であって愛媛県ではないのに」

エヴァンジェリスト氏の頭の中には、渦が巻き始めていた。

「そう云えば、『東長崎』も妙だ。『東長崎』は、東京都にある駅であり、長崎県にある訳ではない」

エヴァンジェリスト氏の頭の中の渦が大きくなってきた。エヴァンジェリスト氏は、イライラしてきた。

『東久留米』だってそうだ。『東久留米』があるのは、東京都であって福岡県ではない」

エヴァンジェリスト氏の頭の中の渦は、氏の生れた音戸の瀬戸の渦よりも大きくなった。イライラ感がつのった。

エヴァンジェリスト氏は、『曲がったことが嫌いな男』』なのだ。渦のように曲がり曲がり曲がっているものは許せないのだ。

しかし、北海道には、『北広島』がある。『北広島』は、広島からの移住した人たちが開拓したことに由来することを聞いたことを思い出した。

「そうか!『東長崎』は長崎からの移住者が多く、『上福岡』は福岡からの移住者が多く、『東松山』は愛媛県松山市からの移住者が多かったのだろう。『東久留米』は福岡県久留米市からの移住者が多かった、ということかあ」

そう思い、頭の中の渦をおさめようとした。イライラ感が減ってきた。

『東長崎』は、『長崎』より東にあるから『東長崎』『東松山』は松山市より東にあるから『東松山』『東久留米』は久留米市より東にあるから『東久留米』、っていう仕掛けか」

頭の中の渦がすっかり消えうせようとした。が…….

「いや、では、『上福岡』はどうなっているのだ?」

頭の中の渦は、鳴門の渦のように大きくなった。






『上福岡』は多分、福岡市よりも緯度は高い。とは云っても、さほどの差があるわけではないだろう」

エヴァンジェリスト氏の頭の中の渦は、渦というよりも、『タイムトンネル』のようなものになってきていた。

中学生時代に夢中になって見ていた米国のテレビ・ドラマ『タイムトンネル』だ。

『タイムトンネル』に主人公のダグとトニーが回転しながら吸い込まれていったように、エヴァンジェリスト氏は、『地名の不思議トンネル』にグルグルと吸い込まれて行っていたのだ。

今と違い、ネットがなく、情報を容易に入手できる時代ではなかったので、『東長崎』も、『東松山』、『上福岡』、『東久留米』も、それぞれ長崎、松山、福岡、久留米とは元々、関係なく、関東に長崎、松山、福岡、久留米としてあった地名に由来していることをエヴァンジェリスト氏はその時、知らなかった。





「修士!頭いいんだねえ、顔だけでなく」

『お父さん』の言葉が、エヴァンジェリスト氏を『地名の不思議トンネル』から『現世』に引き戻した。

「でも、親友は、ライバルのハンカチ大学です。それも、変態です」

エヴァンジェリスト氏は、暑くもないのに汗が出てきていた額を左手の甲で拭った。

そんな他愛もない会話をしながら、『お父さん』とエヴァンジェリスト氏とが乗ったトラックは川越街道を順調に進んでいた。

しかし、

「あ!」

突然、『お父さん』が叫んだ。

「あ!」

同時に、エヴァンジェリスト氏も叫んだ。



(続く)



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