「(え!?牛田?)」
川崎の『味の素うま味体験館』にいるはずのビエール・トンミー氏の眼には、中学生の自分の姿が見えていた。
『いーちどだけ、お茶なんかあ....ん』
「(やっぱり、『恋泥棒』…..)」
『ごめんね、ジロー』に続き、奥村チヨのヒット曲が聞こえてきていたのだ。
「(牛田中学でも、ボクは純粋であった)」
小学生時代を山口県宇部市で過ごしたビエール・トンミー氏は、中学生になる時、親の転勤で広島市に引っ越した。住まいは、牛田、学校は、牛田中学であった。
『にーどがさんど…』
「(んぐっ!)」
その時、ビエール・トンミー氏は、自分が股間を抑えたことに気付いていなかった。
「(あ、あ、あ、….網タイツ!)」
そうだ!奥村チヨは、網タイツを履いていた。
『すーきに….』
「(んぐっ!)」
『恋泥棒』のレコード・ジャケットの奥村チヨは、網タイツを履いていたのだ。
「(そうだ…あの網タイツを見た時から、ボクは変態になったのかもしれない…..」
『アナタのことぅを』
という歌声と共に、奥村チヨが、こちらを指差した。
「(んぐっ!んぐっ!)」
ビエール・トンミー氏は、より強く股間を抑えた。
「え!?なんで?」
(続く)
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