「あらまあ、いいんじゃないの、アータ」
マダム・トンミーは、夫の動揺も知らず、そう云った。
「う、う、うーん…..」
ビエール・トンミー氏は、返事なのか、呻き声なのか分からない声を発した。
「(マズイ!.....嬉しいけど、マズイ!)」
『ウチに来て頂いて、Macのこと教えて欲しい』という『内田有紀』に酷似した女性の申し出は、ビエール・トンミー氏を混乱の渦に陥れたのだ。
「(ボクは、『Mac』を使っているが….)」
そうだ、Macを使っていることは、嘘ではなかったのだ。
「(でも、ボクは、『Mac』は使っていない)」
ビエール・トンミー氏は、エヴァンジェリスト氏的に云うと、『己を見る男』であった。自らの『嘘』を自覚しないではいられなかった。
「是非、お教え頂きたいわ」
という『内田有紀』に酷似した女性の声を聞き、股間を抑えながら、
「(ボクは、確かにハードウエアとしての『Mac』は使っている。だって、『Mac』は本当に美しいからだ。でも、ハードウエアとしての『Mac』上で使っているのは、Windowsだ。ああ、ボクは『嘘』をついてしまったのだ)」
と、誰にでもなく、懺悔した。
「『ユキ』もおじさまに色々と教えて頂きたいでしょ?」
「うん!色々とね!」
と、『ユキ』と呼ばれた少女も媚びるような視線をビエール・トンミー氏に送ってきた。
(続く)
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