「(許せん!)」
ビエール・トンミー氏の眼には、眼の前のガスコンロの火が映っていた。
「(『オータニ・リョウヘイ』は、40歳後半で、まだそんなに『元気』なのか!?)」
『松坂慶子』に酷似した女性が、先にトンミー夫妻が炒めておいたキャベツとピーマンを、「Cook Do®️」<回鍋肉用>と豚肉と長ネギを混ぜたフライパンに戻し、炒め合わせていた。
「(ボクは、40歳後半では、もう余り『元気』がなくなっていた。ソノ気持ちだけは十分あったが…..)」
ビエール・トンミー氏の心情は、怒りから落胆に変っていった。
「はーい!ご主人、『ユキ』ちゃん、お待たせえ!」
『松坂慶子』に酷似した女性が、声高らかに、フライパンの中のものを皿に盛り付けた。
「わーい!」
『ユキ』と呼ばれた少女が、それまでにない少女らしい歓声を上げた。
「はい、アータ」
マダム・トンミーが、小皿に取り分けたホイコーローと、味の素が配ったラップに包まれた小さなおにぎりを夫の前に置いた。
「いただきましょ!」
「うん」
その時、『ユキ』と呼ばれた少女は、もうホイコーローを口にしていた。
「うわー、美味しい!自分で作ったのって美味しいんだねえ」
「そうよ」
『内田有紀』に酷似した女性は、娘を愛おしそうに見た。
「ねえ、今晩、パパにもホイコーロー作ってあげて。きっと、ムシャぶりつくよ」
『ユキ』と呼ばれた少女は、興奮していた。
「(な、な、なにー!『ムシャぶりつく』だとお!)」
(続く)
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