「いえいえ、奥様、ぜーんぜん、ダメですの。もう歳ですもの」
マダム・トンミーは、首を左右に振りながら、『内田有紀』に酷似した女性にそう言葉を返した。『痛い程、腰をお使いですの?』と訊かれ、戸惑う夫に代って答えたのだ。
「(ええ!なんてことを云うのだ)」
ビエール・トンミー氏は、妻の言葉に、腰を叩くことを忘れた。
「あら、まだまだお若くて、『精力』的でいらっしゃるように見えますわ。ふふ」
「(せ、せ、『精力』的!...うっ!)」
ビエール・トンミー氏は、またもや、両手で股間を強く抑えた。
「ふん!大人ってフケツ!」
「(へ?)」
『ユキ』と呼ばれた少女だ。明らかに批判的な視線を送ってきていた。
「ママも、アンタもアンタの奥さんも、ここに何しに来たのよ!ホイコーローを作りに来たのよ!」
少女の言葉に、ビエール・トンミー氏にしか聞こえない声であったが、その声に促されたかのように、ホイコーロー(回鍋肉)の作り方の説明が始った。
(続く)
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