「ごめんね、オジサン」
「え?」
『ユキ』と呼ばれた少女と記念写真を撮るべく並んでいた時である。
「ごめんね、オジサン」
と、『ユキ』と呼ばれた少女が云った。
「アタシね、ホントは、オジサンのこと、好きなの」
「(え!?え、え、ええ!?)」
ビエール・トンミー氏は、混乱した。
「(き、き、君は、リアルに話しているのか?)」
「学校には、オジサンみたく格好いい男の子いないの」
「(いや、君はまだ若いんだから、こんなオジイサンを好きにならなくても)」
「一人だけいたのよ、素敵な男の子が、小学生の時には。でも、その子は、鶏にしか興味ないみたいで、『いきものがかかり』として、いつも学校の鶏小屋にばかりいたの。アタシ、いつもグラウンドから鶏小屋の中のその子のことを見てたの」
「(え!?....まさか…..)」
「オジサン、その子に似てるの」
ビエール・トンミー氏は、山口県宇部市琴芝小学校時代の自分を思い出していた。いつも学校の鶏小屋にばかりいた児童であった。
「(『ユキ』ちゃん、君は……)」
自分が時空のどこにいるのか分らなくなっていた。
「オジサン、今度は、ママと写真撮ってあげて」
それは、間違いなく『ユキ』と呼ばれた少女のリアルな言葉であった。
(続く)
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