「(いや、違う!.....そうじゃないんだ!)」
ビエール・トンミー氏は、またもや『ユキ』と呼ばれた少女に言い訳をしていた。
「何が、『そう』じゃないのよ?」
「(いや….そのお……)」
いい口実を見つけられないでいると、
「アータ、喉がつかえたのね。お水があるわ」
マダム・トンミーが、夫に助け舟を出した。
いや、彼女には、夫と少女の心の会話は聞こえていないはずなので、喉を鳴らすようにしていた夫を見て心配しただけのことであったのであろう。
「う…..う、うん」
と、ビエール・トンミー氏は、水の入ったコップを口に持っていった。
「ふん、助かったわね。優しい奥さんねえ。いや、間抜けな奥さんかしら。夫のイヤラシイ気持ちを知らないで」
「(いや、ボクは、そんな変な気持ちなんて…..)」
「何よ、『そんな』変な気持ちって?」
「(ボクは、ただ…..)」
「女がモノを食べる口に『反応』するなんて、ホント変態ね」
「ええー!そうなのお!?」
ビエール・トンミー氏と少女との心の会話に割り込んで来た者があった。
(続く)
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