(住込み浪人[その41]の続き)
「(ボクの志望は、あくまでハンカチ大学なんだ)」
OK牧場大学の学生食堂で、最後のひと匙分のカレー・ライスを食べ、スプーンを舐めた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、虚空を凝視めた。
「(だから……)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、『レッド・ブラッド・アーチ(Red Blood Arch)』を思い出していた。
「(あの『アーチ』をくぐるようになろうと思えばできたんだ)」
その云い方は、『「カンリツ」だから合格しないようにしたさ』と強がった男子学生と同じようにも聞こえる。
「(あのまま、入学手続を済ませてしまえば…..)」
どうやら、『カメムシ』や『テイトー王』について話していた二人の男子学生とは事情が違っているようだ。
「(だけど、ボクの志望校は、ハンカチ大学だから….だから、辞退したんだ)」
そうなのだ。『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ただの『スミロー』ではなかったのだ。
「(ああ、ボクは、試しにと、『テイトー』を受験した。そうしたら、簡単に合格してしまったのだ)」
帝立大学東京に合格しながら、入学を辞退した、というか、あくまでハンカチ大学に入りたくて、帝立大学東京の入学手続をしなかった、というのだ。
「(両親と妹には、『何故?勿体無い!』と云われた)」
実家で両親に頭を下げる自分の姿を思い出した。
「(広島皆実高校の担任にも、『頼むから、テイトーに行ってくれ』と懇願された)」
広島皆実高校3年2H(ホーム)の教室で、自分に頭を下げる担任の頭髪を思い出していた。
(続く)