2019年3月1日金曜日

住込み浪人[その12]







「綺麗だった…..ああ、あれが女子大生というものか….」

OK牧場大学の学生食堂のある棟に向いながら、『住込み浪人』で、まだ女子大生なる存在と交わることのないビエール・トンミー青年は、呟いた。

「い、いや、違う!あの女子大生のせいではないんだ……」

と、誰にも聞こえぬよう云いながら、その女子大生に指摘された体のある部分を抑えた。

「す、きーなあ、ヒトにぃ…」

頭の中に、ある女性アイドル歌手の唄声が響いた。

「ああ、『星に願い』は叶うのか…..今度こそ」


今度こそ、ハンカチ大学に合格したく、それが叶うなら、星にでも、石にでも願いをかけたかったのだ。

だが…..

「う、うーっ!」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼には、OK牧場大学の校庭は映らず、女性アイドル歌手のミニ・スカートから出たムチッとした太腿が、VRを見るように映っていたのだ。

「受験だ。試験があるのだ。今度こそ、受からないといけないんだ!」

しかし、女性アイドル歌手が、唄いながら、腰を振る度に、眼の前でミニ・スカートがひらめく。

「う、うーっ!」

呻きながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、異様な程に両脚を内股にして、学生食堂のある棟に駆け込んで行った。


(続く)


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