(住込み浪人[その12]の続き)
「ググーッ」
OK牧場大学の学生食堂に入ると、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年のお腹が鳴った。
「(昨夜7時頃、『カッパヌードル』を食べたきりだものなあ)」
3年前に発売されたカップ麺『カッパヌードル』は、『住込み浪人』にとっては有難い食品であった。
「(調理しなくていいから楽でいい)」
『カッパヌードル』は、カップの蓋をカパッと剥がして(そのカパッと剥がすことから、『カッパ』ヌードルと名付けたらしい)、お湯を注ぎ、3分10秒で出来上がるのだ。
「(しかも美味い!)」
醤油味が、幾度食べても飽きない。週に5-6回は食べている。
「(3分10秒という待ち時間も絶妙だ。出来上がるのが待ち遠しいが、待ちきれない時間でもない。そうだ、『ユルトラ・エイト』が地球で活躍できるのも、3分10秒だ)」
『ユルトラ・エイト』は、流行りの子供向け特撮テレビ・ドラマのヒーローである。『エイト』は、『8』を横にすると『∞(無限)』になることから、無限な存在、或いは、無限に強い、を意味させて名付けられたとも噂されていた。
「(昨夜も、モロダシ・ジャンが、『ユルトラ・エイト』に変身した時に、『カッパヌードル』にお湯を注ぎ、怪獣を退治し終え、変身から3分10秒経った時に、『カッパヌードル』の蓋を取ったのだ。ああ、その時の醤油味の香りがいいのだ)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、まぶたを閉じ、何か匂いを嗅ぐように鼻腔を広げ、首を少しく左右に振った。
(続く)
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