(住込み浪人[その15]の続き)
「(自分が食べるだけなら構わんが、ボクにまで薦めやがった….)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、唇を歪め、それだけではなく、口の中、何故か、舌まで歪めた。
「(アレは、お菓子だろうが!)」
東京メトロポリタン大学のすぐ近くの下宿で、満足そうに、『アレ』を頬張る友人エヴァンジェリスト氏の姿を思い出した。
その下宿に遊びに行った時のことであった。
「君は、一体、そんなもの6個も食べて、気持ち悪くならないのか?」
と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、訊くと、普段は、ヘラヘラしている友人が、眉間に皺を寄せ、口を尖らせ、抗議してきた。
「6個ではない!6枚だ!これは、『枚』と数えるんだ!」
「ふん、どっちでもいいだろうに。たかが、『たい焼き』ではないか!」
そうなのだ。エヴァンジェリスト氏が、夕食として頬張っていたのは、『たい焼き』であったのだ。
(続く)
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