2019年3月5日火曜日

住込み浪人[その16]







「(自分が食べるだけなら構わんが、ボクにまで薦めやがった….)」

『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、唇を歪め、それだけではなく、口の中、何故か、舌まで歪めた。

「(アレは、お菓子だろうが!)」

東京メトロポリタン大学のすぐ近くの下宿で、満足そうに、『アレ』を頬張る友人エヴァンジェリスト氏の姿を思い出した。

その下宿に遊びに行った時のことであった。

「君は、一体、そんなもの6個も食べて、気持ち悪くならないのか?」

と、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年が、訊くと、普段は、ヘラヘラしている友人が、眉間に皺を寄せ、口を尖らせ、抗議してきた。

「6個ではない!6枚だ!これは、『枚』と数えるんだ!」
「ふん、どっちでもいいだろうに。たかが、『たい焼き』ではないか!」



そうなのだ。エヴァンジェリスト氏が、夕食として頬張っていたのは、『たい焼き』であったのだ。


(続く)



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