(住込み浪人[その22]の続き)
「スミローちゃん、ちょっと待ってね。うふん」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の注文を受けたOK牧場大学の学生食堂のカレー担当のオジチャン、いや、オジチャンにも見えるオバチャンは、大きな炊飯器の蓋を開け、カレー皿にご飯を盛った。
「(ぶるっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、オバチャンの『うふん』に思わず、身震いした。
「おや、スミローちゃん、風邪かい?寒いのかい?オバチャンがアッタメてあげようか?」
「(ぶるるっ!)」
オバチャンは、ご飯を盛ったカレー皿に、今度は、カレーの入った鍋からカレーをかけた。
「あたしゃね、こう見えても、若い頃は、『松坂慶江』に似てるって云われてたんだよ」
「(えっ!『松坂慶江』!)」
『松坂慶江』は、かつての美人女優だ。しかし今はもう、かなり太ってしまい、どちらかと云えば、お母さん女優と云われる『京塚昌江』になってしまっていた。
「(『松坂慶江』にだって、『京塚昌江』にだって、興味はない!)」
「昔はさあ、網タイツ履いて、『これも恋、あれも恋』って歌って、男たちを魅了したもんだよ」
「(んぐっ!)」
自身の意思に反して、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、唾を飲み込んでしまった。
「おや…..うふん」
「(ち、ち、違う!)」
「何が違うんだい?いいんだよ、スミローちゃん、まだ若いんだから。若い子ってそういうもんなんだよ」
「(ち、ち、違う!何が、ソウイウもんなんだ!?)」
(続く)
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