(住込み浪人[その37]の続き)
「ああ、『サトミツ』かあ」
OK牧場大学の学生食堂でカレー・ライスをひと匙分だけ残し、スプーンを宙に持ったままとなっていた『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、『サトミツ』という言葉に、眼光を光らせた。
「『官立』でもさあ、『サトミツ』はいい、としないか」
と、同意を求められ、カメムシの解説をしていた男子学生は、頬を緩めた。
「ああ、実は、オレ、なんだかだ云って『テイトー王』を見てるのはさあ、『サトミツ』が出てるからなんだよな。お前だけに云うけど、オレ、『サトミツ』見ながら……」
と、カメムシの解説をしていた男子学生は、声を落とした。
「(んぐっ!)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、スプーンを持っていない方の手を足の付け根に持っていった。
「(んぐっ!んぐっ!)」
カレーの香りは消え、甘い、砂糖のような、なんだか誘う蜜のような香りがしたように思えた。
(続く)
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