(住込み浪人[その31]の続き)
「どうせ、若い子の方がいいんでしょ!」
オバチャンは、駄々っ子になっていた。
「え、え、ええーっ!」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、思わず、声を発した。
「学食のカレー担当のオバチャンが、『住込み浪人』と何をもめているんだ」
という眼で、周りの学生たちが、こちらを見ている。OK牧場大学の学生食堂である。
「スミローちゃん、さっきから前の娘の脚ばかり見てるじゃないか」
「いや、ボ、ボ、ボクは…..」
「脚見てさ、『んぐっ、んぐっ!』って喉を鳴らしてるじゃないのお!」
「いや、それは、カレーで…..」
「ああ、あの娘の脚は綺麗さ。でもね、アタシだって昔はね」
「(松坂慶江か…..)」
「そうだよ。『これも恋、あれも恋』って歌ってた時の網タイツの脚見たら….」
「(んぐっ、んぐっ!)」
「そう、あの頃のアタシの網タイツの脚見たら、そんなもんじゃなかったさ。『んぐっぐっぐっぐっ!』って喉を詰まらせて悶絶さ!」
「(ええーっ、悶絶!?)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、カレー・スポーンを持っていない方の手を、慌てて股の付け根に置いた。
「おや。ふふ……」
「(いや!いや、いや、違う、違う!)」
心中で必死に抗弁したその時であった。
「サキさーん!」
(続く)
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