(住込み浪人[その13]の続き)
「君いー、悪いんだけど、先に進んでくれない」
男子学生の声に、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、我に返り、閉じていた目を開けた。
「あ、すみません」
OK牧場大学の学生食堂にいたのだ。トレイを持って、カレーのカウンターの列に並んでいたが、前夜の『カッパヌードル』のことを思い出している内に、列が進み、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年とその前の学生との間が空いていたのだ。
「ふん!『住込み浪人』か」
男子学生は、ジャージを着ているように見えた男を『住込み浪人』と看破していた。
「だせーなあ」
OK牧場大学の学生で、大学構内にジャージ姿でいる者なんていないのだ。それで、『住込み浪人』と判断したのであろうが、結果は正しかったが、ジャージを着ているように見えた男が着ていたのが、実はパジャマであることまでは分らなかったようだ。
「(昨夜、『カッパヌードル』を食べた後、『歌のベスト・エイト』を見ながら、寝ちゃったからなあ)」
『カッパヌードル』は、美味しいが、いくら美味しくとも、それだけでは夕食としては量が足りない。普段は、受験勉強をしながら、お菓子を食べて、空腹を満たしているが、昨夜は、迂闊にもテレビを見ながら、寝てしまったのだ。
「(『歌のベスト・エイト』に、あの娘が、出ていたのがいけないんだ)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年に耳には、再び、
「す、きーなあ、ヒトにぃ…」
という、ある女性アイドル歌手の唄声が響いた。
「(それで、ついつい一人で『作業』をしてしまって、疲れちゃっんだ)」
『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼には、またもや、女性アイドル歌手のミニ・スカートから出たムチッとした太腿が、VRを見るように映っていた。
(続く)
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