(住込み浪人[その28]の続き)
「(んぐっ!)」
OK牧場大学の学生食堂で、前方席に、こちら向きに座った女子学生の美脚に、喉を詰まらせながら、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ポーク・カレーをこさげた。
「(ん?『こさげた』は、標準語だろうか?)」
福岡で生れ、山口県宇部市の琴芝小学校で小学生時代を過ごし、広島市の牛田中学、広島皆実高校で、中学・高校時代を過ごしたものの、博多弁にも山口弁にも広島弁にも染まらなかったと自負していたが、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年は、ふと不安になった。
「(お皿のカレーを残すことなく掬ってしまうことは、『こさげる』ではないのではないだろうか?)」
上京してから、『こさげる』という言葉を聞いたことがないことに今、気付いたのだ。
「(いや、たまたま『こさげる』場面に遭遇しなかっただけかもしれない)」
と、思いながらも、『住込み浪人』ビエール・トンミー青年の眼は、前方席に、こちら向きに座った女子学生の美脚を『こさげる』ように舐めていた。
(続く)
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